夏の影と陽
80.毒から発芽した悪の花は、ゆっくりと芽吹き、ついにその姿を現した。
ある女性が、自分のポケモンを自宅で監禁し、虐待していたことが発覚した。
約、六年間。
そのポケモンは、主人と慕うトレーナーに、大切な何かを奪われた。
長い、長い時間を掛けて。
もちろん、そういう事件はプラズマ団が結成された以前から多かれ少なかれ起こっていた。
しかし、あの甘く染み渡る毒の言葉が、人々の脳裏をかすめたのだ。
ポケモンは、解放されるべきだ。
すぐにテレビでは特集が組まれ、この事件とゲーチスらの思想についての見解が広がった。
俺たちポケモントレーナーへの規制も厳しくなった。
年に一度、トレーナーもポケモンも皆、ポケモンセンターへ検診に行かなくてはならなくなった。
トレーナーカードはその度に更新するため、診断書と共に警察署なんかへ行かなくてはならなくなった。
何も悪いことなんかしてないはずなのに、何だか悪いことをしている様な気分になる。
そんな感じだ。
ポケモンと距離を置くようになってしまった。
そんな声を、よく耳にする。
本当に世間ってのは流されやすいもので、あのポケモン虐待の事件以降、犯罪や事件はしばらく多くなった。
人間からポケモンへ対するものもあれば、その逆もある。
ポケモンだって、人の姿になれば俺たち人間と意思疎通が出来るんだ。
この混乱を利用して悪事を働こうとする奴らは、残念ながら沢山いた。
人も、ポケモンも。
そして、いま俺が直面しているこの事態も、もしかすると、だ。
こいつも、こいつのトレーナーも、あの事件の被害者なのかもしれない。
ばら撒かれた毒から生まれた、花なのかもしれない。
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