第四章

 31.

「いってきまぁ〜す」

「いってきまーす!」

元気に飛び出して行くジュペッタ二匹を見送った後、兵太、新、陽も倉庫を後にした。
リョウと昴は今も、夜間飛行を続ける絆優のため、三階のバルコニーで電気玉を作っている最中だ。
兵太が走りながら口を開く。

「いいか。トレーナーの救助と爆弾探しとは言ったが、メインは爆弾探しだ」

「はあ!? 何言ってんだ兵太!」

「ゆの達を助ける方が先じゃないの!?」

抗議する二匹に、兵太は目を細めながら説明する。

「俺も考えたんだよ。まあ聞いてくれ」

一つ息を吐き、兵太は続けた。

「まず、ロケット団がこんなにも大々的な犯罪を計画したのは、随分と久し振りなはずだ。俺も過去のことを全部知ってるって訳じゃねぇが、数年前に本国で実験していたポケモンを利用した犯罪が世間に露呈して以降、ロケット団は目立った活動はしていなかった」

三匹は倉庫群を抜ける角を曲がった。
陽がイリュージョンで、三匹をコラッタの姿に変える。
兵太は更に話を続けた。

「それが見ろ。何百もの人とポケモンを巻き込んだ大犯罪だ。こんなことをして、更に人の命を奪おうなんてことをすれば、ロケット団は本当に再起不能になる。そんなことをするのは、ただの大馬鹿野郎だ」

「だからその大馬鹿野郎が、ロケット団なんだろ!」

陽が吠える。
しかし兵太は首を振って否定した。

「いや違う。俺の知ってるロケット団は、そこまで馬鹿じゃねえ。もっと狡猾で、悪辣で、陰険な奴等だよ」

「おじいさん、言葉が難しい!」

新の声に、兵太が応える。

「毒薬やら爆弾やらで人間を直接殺すなんて安直なことは、流石のロケット団もしねえってことだ!」

絨毯の敷かれた廊下へ出ると、そこにはロビーへの入り口が見えた。
先程新と陽が通った、立食会の会場である、大ホールに続く通路である。
三匹は広い階段を、手すりを伝ってするすると昇って行く。

「じゃあ、今は一体どういう状況なの? ゆの達は、大丈夫ってこと?」

「大丈夫……とまではいかねえ。まあ、焦って助ける必要は無いと、俺は思う。焦って助けるより、先のこと考えてから行動することがベストだ」

階段を昇りきり、大ホールへ向かって突き進む。

「それでも……、だ」

しばらく進んだ先で、兵太は足を止めた。
そこは新と陽が見つけた、大ホールへ続く抜け道。通気口の前だった。

「それでもやっぱり、自分のパートナーのことが気になるだろう? お前等」

「えっ……」

「おじいさん……!」

兵太が、二匹に振り返って言った。

「多少の時間を設けよう。お前等のパートナーが無事かどうか、確認しに行くぞ」


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