第一章

 5.

バトルトーナメント、デッキ会場Aブロック。
陽が高くなり、屋外のバトルフィールドには気温が高くなるに連れ、濃い陽炎が立ち込めていた。
人々の熱気溢れる声援が飛び交う中、行われている第四戦目。
そこでは屋外のフィールドならではの臨場感で、白熱した空中戦が繰り広げられていた。
バトルフィールドに立つミツキと相対するは、先程彼女が客席から臨んだ少女。
名前を、ゆの、という。

「兵太さん、つばさで打つ!」

「絆優(きずゆ)、コットンガード」

絆優、と呼ばれたチルットは、身体の周りにもこもこと大量の羽毛を発生させた。
勢い良くチルットの懐に入ったウォーグルだったが、濃密な綿の防壁によりその威力は激減した。

「ううう、痛いです……」

それでもその威力に気圧されたのか、チルットは思わず目をうるませ、ぱたぱたと空中へ飛び相手と間合いを取った。
そのチルットの様子に、ウォーグルは目を光らせた。

「甘いな、お嬢ちゃん!」

そう言って、ウォーグルは泣きべそをかくチルットへ向かい、追い風を起こした。
強烈な一派の前触れ――――そう確信したチルットは、思わず両の目を瞑った。
しかし、彼女のトレーナーはその光景から目を離していなかった。

「絆優、コットンガード!」

いっぱい出しちゃえー!
そう叫ぶゆのに応えるように、チルットは涙目になりながらも、これでもかというほどの大量の羽毛を発生させた。
もはやその姿はチルットというポケモンではなく、まるで宙に浮いた白い毬のようだった。

「兵太さん、ブレイブバード!」

「いざ!」

勢いよく、チルットの懐へと入り込むウォーグル。
その速さは人の目では追えず、気付いたときには既に二匹はフィールドライン際の甲板に崩れ落ちていた。
誰もがチルットの敗北を悟った――――そのときである。

「絆優、ほろびのうた」

ゆのが、静かな声で言った。


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