8.

皆さんは積乱雲という雲の名前をご存じでしょうか。
いわゆる、入道雲のことですね。
蒸し暑い夏によく見る、あの大きなもくもくとした雲です。
外から見たらとても綺麗なのですが、局地的な大雨……ゲリラ豪雨はこの雲によってもたらされます。
そして今まさに、その積乱雲によって、外は物凄い大雨です。どしゃぶりです。
僕の予報は当たってました。大当たりですね。

昼下がりの気持ちのいい時間帯に、雨は降ってきました。
一般のサラリーマンさんやOLさんは、待ちに待ったお昼の休憩時間だったのでしょう。
皆さん、急いで屋根のある場所へ駈け込んでいます。
え、僕ですか?
僕はほら、大丈夫ですよ。
いつも持ってる折り畳み傘があるので。
割と大き目の折り畳み傘なので、普通に歩けます。

そんな時、見つけてしまいました。
白いフレアスカート。
そう、彼女です。
彼女はなにやら落ち着かない様子で、バスターミナルの屋根の下にいました。
急な雨に降られて、困っているのでしょうか。

……声を掛けるかどうか、凄く悩みました。
だってほら、ここで声を掛けるの、なんか不自然じゃないですか?
いや、不自然じゃないやり方というか声の掛け方も、あるのでしょうけどね。
残念ながら、今の僕にそんなスキルはありませんから。

でもこの時、奇跡が起きたんです。
彼女の方から僕に気付いて、いつものお辞儀をしてくれたんです。
ああ、これはもう、行くしかないですよね。


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