「どうしたんですか?」
「凄いですね、大雨です! 大当たりですね!」
「あっ、いえ、そうではなく……」
早く帰ると言っていたのに、どうしてまだこんなところにいるのか、という質問だったのですが……。
「やっぱり、先輩の言うことを信じておくべきでした…!」
うつむいて、しょんぼりとする彼女。
凄く、申し訳なさそうにしてくれています。
「いいえ、気にしないでください。それより、早く帰るのではなかったのですか?」
「えっ!」
「え?」
「あ、ちょっと他の用事を思い出して、寄り道しちゃったんです」
なるほど。
……何か隠されてしまった感はありますが、仕方ないでしょう。
他人に訊かれたくないこともありますよね。
ちょっと悲しいですが。
ただ、このまま彼女をここに置いていくのは可哀想です。
彼女に近付いてから気付いたのですが、彼女はバスに乗車する人の列に加わっていませんでした。
おそらく、雨宿りするためだけにこのバスターミナルの屋根の下へ来たのでしょう。
そういえばと思い出しましたが、彼女は電車での通勤ではなかったでしょうか。
「確か、電車通勤でしたっけ」
「え? はい、そうです」
「駅まで行くのでしょう? 送って行きますよ」
ここのバス停から駅まではしばらく歩かないといけません。
しかも不便なことに、この辺りには地下歩道が無いんです。
早く帰らなくちゃいけない用事があるのに、こんなところで足止めなんて可哀想です。
「いえ! そんな、申し訳ないです!!」
あ、それに、もうすぐ止むかもしれませんよ? と彼女。
……凄い否定っぷりです。
遠慮してくれているのは分かるのですが、ちょっと傷つきます。
「僕が予想するに、30分から40分くらいは止む気配はありませんね……」
「え!? で、でも……」
「でも、急いでいるんですよね?」
「えっ、う、はい……」
「だったら、気になさらないでください」
「うう、でも……」
「それに、このまま貴女を置いていくなんて、僕、そんな薄情な人になりたくないです」
「……」
根負けしたのか、彼女はお願いします、とお辞儀をしてくれました。
ふう、なかなか頑張ったでしょう? 僕。
こんなチャンス、逃がしたりしませんよ。
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