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抵抗する力もない腕を押さえ付けた時、半開きだった小さな唇が微かに動いた

とろりと微睡む目尻から涙が一筋流れるのを見た

震える声で呼ぶのは五男の名前

だが、今ここにいるのはその底抜けに明るい五男ではない


「じゅうしまつくん」


今の百合には目の前の色を識別出来ていないようだ

違う、十四松じゃない

その一言が喉奥に引っ掛かったまま出てこない

辛うじて、ごめんと呟く

百合が十四松を欲しいように俺も百合が欲しいんだ

起こしていた体をゆっくり前に倒す
百合の荒い呼吸が耳にかかる

涙と唾液で濡れた頬に口付けると百合が笑った


「すき。だいすき」


はしゃぐ声

僕も大好きだよ、と五男の下手な真似


「うれしい。して、もっとして」


随分華奢になった腕が背中に廻る
顔を引き寄せられ百合の唇が頬に触れると完全に箍が外れた

捲り上がったワンピースの裾に手を入れる
下着を脱がせるのももどかしい

太股を抱え、体重をかけると、痛みからか百合が体を捩る
逃げる百合を捕まえ
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