子羊と悪魔の密談




視界に広がるのは黒。
たぶん、自分がいるのは狭いコンテナの中。


私は数分後、喰種に売られる。




大学からの帰り道、突然仮面を被った人達が目の前に現れた。
そこからは覚えていない。ただ、あれは喰種であることは分かった。また、時々コンテナの外から聞こえる話し声からここは喰種のオークション会場であるということも分かった。そして、私は今夜の目玉商品のひとつらしい。

売られたらどうなるの?
やっぱり食べられるんだろうか。それとも奴隷のような扱いを受けるんだろうか。

どちらにせよ、私は死ぬんだ。

「へえ、目玉商品なだけあるなぁ」

顔を上げるとコンテナが開けられていて、ひとりの喰種がこちらを覗いていた。思わず体が固まる。ついに私の番なんだろうか。喰種は「ハハッ」と肩を揺らすと、不思議なことを言った。

「このオークション、途中で終わっちゃうんだ」
「え……?」
「CCGが来てるみたいでね、おそらく君は売られずに済む」
「!」

CCG?喰種捜査官が来ているの?
どうしてこの喰種はそんな事を私に話すんだろう。そして、どうしてそんなことを知っているんだろう。

「ほ、本当に?」
「うん。ねぇ、お嬢さん」

喰種は仮面を外した。人間とは違う、その眼に体が引いた。恐ろしい、でもこの喰種は悪戯っ子のような顔をして私に言う。

「面白いことは好き?」
「面白いこと……?」

――"こっち"の世界に来ない?



To be continued…


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