大寿と話し合った結果、八戒が黒龍に行きその代わりに八戒の姉貴を解放するというものだった。大寿は妹弟にDVをしているらしく、三ツ谷くんは八戒は柚葉ちゃんを助けるために黒龍に渡すと言っていた。八戒の表情はどうも曇っていたように感じる。

その後八戒が俺とタケミっちに大寿を殺すと宣言してきた。そんな八戒を見て俺らは黒龍を潰すと決めた。

とりあえず幹部に話をしてみたが、満場一致で却下された。三ツ谷くんの顔に泥を塗ると言われて、本当にその通りだった。

「俺も混ぜろ」

タケミっちと『うまくいかねーな』と話していたところ後ろから稀咲の声がした。

「稀咲…!?」
「俺も八戒を止めたい」

俺は立ち上がって稀咲を睨みつけた。

「見え透いた嘘ついてんじゃねェぞ!俺らがテメェと組むワケねェだろうが!?」
「じゃあどうすんだ?和平協定がある限り、絶対に黒龍とはやり合わねェ。今マイキーは弱ってる。力をつけてきた黒龍を、ここで潰しておきたい」

俺は頭にきて近くにあったグラスを割り、稀咲の喉に突き付けた。

「“マイキー”じゃねぇだろ、マイキー“くん”な?弱ってるとかなんでテメェがわかんだよ?幾ら隊長でもお前は俺らとタメ。敬語使えや」
「千冬…!」

俺を止める声が聞こえてチラリとタケミっちを見ると、半間がタケミっちの喉にナイフを当てていた。

「オイオイ、内輪揉めは御法度だろぉ?そっちが破んなら俺も暴れちゃうぞ?」

俺はその言葉を聞いてガラスを持っていた手を下げた。

「…俺らがオマエらと組む、メリットは?」
「黒龍の中に内通者がいる。時間を無駄にすんのは嫌いだ。着いてこい」

その言葉にとりあえず俺とタケミっちは着いて行こうとした。その時、

「あれ?千冬くん?」
「え、なまえさん!?」
「…なまえ?」
「うぉー、すっげー美人♡」
「え、っと…?」

突然のなまえさんの登場に驚き名前口に出すと、何故か稀咲までなまえさんの名前を口にして、半間はなまえさんを見つめてネットリした視線を向けていた。そんな中なまえさんは稀咲を知らないのかキョトンとしていた。

「あぁ?なんでてめぇがなまえさん知ってんだよ?てめぇはなまえさんに関わんじゃねーぞ!?何かしたらまじで容赦しねぇからな」
「マイキーの大切な人なんだろ?名前を聞いた事があるってだけだ」
「千冬くん落ち着いて…!」

なまえさんの声掛けにも反応出来ないほど俺は激昂して、もう稀咲と半間の視界に入れないようになまえさんの腕を乱暴に引っ張って店の入り口あたりまで連れてきた。

「千冬くんどうしたの…?声掛けたの怒ってる?」
「いや、違います。アイツ、金髪眼鏡の奴って見覚えとかないっすか?」
「いや、記憶にないけど…」
「それならいいっす」

なまえさんは本当に稀咲を知らないようだった。なまえさんの事は稀咲に知られたくなかった。しかもマイキーくんの大切な人と言っていたが、場地さんとも幼馴染という事まで知っていたらもしかしたら手を出される可能性も大いにある。

「今後あの2人に会ったら走って逃げてください。もうアイツらに関わらないでください」
「…理由聞いてもいいのかな?」
「アイツら…アイツは場地さんの敵っす」
「圭ちゃん…の?」

なまえさんはまさか場地さんの名前が出てくると思ってなかったようで、目を見開いて驚いていた。

「何を考えてるか分かんねぇ奴なんです。だからなまえさんが危ない目に遭う可能性だってあります。お願いなので近付かないでください」
「そっか。わかった、教えてくれてありがとう」

なまえさんはもどかしそうな顔をしたけど、なんとか分かってくれた。なまえさんは以前に「不良の世界はよく分かんない」と口にしていたから、割とこういう時の聞き分けは良いのがすげー助かる。

なまえさんはお友達軍団とファミレスで駄弁っていてトイレに行こうとしたら俺を見つけたらしい。なんでよりによって会いたくねえ時に限って会っちゃうんだろーな。

「それじゃあ、気を付けてくださいね」
「千冬くんもね」

そう言って別れ、俺は稀咲の元へ戻った。

「あの美人、お前のカノジョー?俺めっちゃタイプー♡」
「彼女じゃねぇけどマジで手出すなよ。マイキーくんも許さねぇぞ」
「おー、こわ!」

半間はふざけて絡んできたけど、コイツにも目付けられたらたまったもんじゃない。悪いけどマイキーくんの名前を借りて牽制したが効き目は分かんねぇ。

「彼女との時間は済んだか?時間がねぇ。さっさと行くぞ」

俺達はこの奇妙な4人で店を出て待ち合わせのカラオケへ向かった。店を出る時にレジの近くの席にいたなまえさんの姿を確認したら、いつものメンバーで楽しそうに談笑していた。

彼女の未来もこうやって笑っていてほしい。俺はその為にやるべき事をする。

君の笑顔を守るため



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