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倫太郎くん大丈夫なんかなと心配しながら保健室に着いた。保健室の入り口には『会議のため職員室にいます。用がある場合は職員室まで』と書いてある紙が貼ってあった。

鍵は開いていたので適当に湿布でも貰えばええよな、と思い先生を呼ばずに中に入る。正直今は1人になりたい気分やったし。

中に入ると誰もおらずとりあえず空いてるイスに座ってボーッとした。授業の予鈴が鳴ったけど、もちろん戻る気になれずしばらくサボる事にした。今日の事を思い出し、男の人ってあんなに力強いんやな、とか、あのまま北さんって先輩が来てへんかったら私はどうなってたんやろ、と考えてると恐怖心が高じる。あの時は強気でおったけど、今になって体が震えてくる。

その時、保健室の扉が開いた。そこには、息を切らし呼吸が乱れた倫太郎くんがいた。

「倫太郎くん、大丈夫やった?」
「俺の事よりなまえでしょ?震えてる」

倫太郎くんが優しく手を包み込んでくれる。倫太郎くんの手の温もりが心地よくて、涙がふと流れてきた。

「倫太郎くん、ほんまにごめん。気を付けてって再三言ってくれてたのに、こんな事になって。ほんま、ごめん」
「今はそんな事考えないで。俺はなまえの傷を深くするために来たんじゃないよ。また落ち着いたらゆっくり話しよ」

倫太郎くんは優しく抱きしめて、背中を摩って落ち着かせようとしてくれた。

「俺はなまえが大好きだから。安心して」

そう言って触れるだけの口付けをくれた。その後、倫太郎くんに湿布を貼ってもらい、片付けたりしていると保健室の扉が開いた。

「あれ、みょうじさんやん。どっか怪我したん?それと、さっき三浜先生が探しとったで?」

保健の先生が戻ってきたようで、担任が探してると言っていた。さっきの件を耳にしたのだろうか。湿布を一枚貰った事と、三浜先生の居場所を聞いて保健室を出た。倫太郎くんともその場で別れ、私は職員室に向かう。

私を見つけた先生は酷く心配をしていて、『気が付かなくて悪かった』と、とにかく平謝りをしてきた。話を聞くと、近藤くんが自分でバレー部顧問に今回の件を話した後、北さんに止められたのもあり事実確認を北さんにもしたらしく、私にも事実確認をさせて欲しくて探していたとの事だった。

近藤くんの話を聞き、概ね事実だったので間違いありませんと返事をし、親にも説明と謝罪をすると言ってくれた。私にも気にかけてくれ、早退するか?と聞かれたため、教室に戻る気にもなれずお言葉に甘えて早退する事にした。楽しみだった体育祭も、今は本気で行く気が無くなるほど気持ちが沈んでいた。

倫太郎くんと絵麻には早退する事を連絡した。倫太郎くんから『学校終わったら家に行く』と返信が来ていた。

荷物を持ってきてもらい、大人しく帰るとお母さんから連絡が入ってた。私の体と心を心配する言葉と、早く家に帰るとメッセージがあった。早退する話もお母さんに入ってるようだった。

家着いても何もする気になれず、自分のベッドでボーッとしていた。何時間経ったのかもよう分からへん。玄関が開く音が聞こえ、足音が近付いてくるのを感じた。部屋の前で足音は止まり、ドアが控えめにノックされる。

「なまえ?開けてもええ?」
「うん、ええよ」

心配した表情のお母さんがドアから顔を覗かせた。

「担任の先生から話聞いたで。怪我は大丈夫なん?」
「大した怪我してへんから大丈夫。お母さん仕事やったんよね?急かしちゃってごめんね」
「そんなん気にせんでよ。なまえの方が心配に決まってるやん」
「…あんな、めっちゃ、怖かった」

私がゆっくりそう言うと、お母さんは泣きそうな顔をした。そして静かに抱きしめてくれた。

「…けど、倫太郎くんがおるから。大丈夫だよ」

お母さんは私から離れると少し笑っていた。

「倫太郎くんはほんま最高の彼氏やね」
「うん、あんな人もう他におらんよ」
「そうやね。ちゃんと大事にして、大事にされなあかんよ」
「わかった」
「倫太郎くんやったらうちは大歓迎やから」

そう言うとお母さんは、なまえなんか食べた?ケーキ買うて来たんやけど食べへん?と空気を和らげてくれた。私を元気付けるために買ってきたんやろな、と思うと嬉しくなるし多少元気にもなる。

リビングでケーキを食べてると、家のインターホンが突然鳴った。お母さんがインターホンに対応してると驚いた声がした。

「なまえ!倫太郎くんが来てくれてるで!」

想像してた時間よりもかなり早い時間に倫太郎くんは来た。部活まだ終わってへん時間やけど、と思いつつ外で待ちぼうけさせるのは可哀想やから素早く玄関へ行く。

「倫太郎くん!部活は?」
「今日と明日は体育祭間近だから自主練日だよ。大丈夫」

サボったのかと思っていたから安心した。2人で話したいのもあったから、私の部屋に通す事にした。お母さんも理解してくれて、すぐに飲み物とお菓子だけ持って行くわ、と言ってくれた。

「相変わらず部屋綺麗だね」
「あんまり部屋におらへんから」

そんな話をしてると、お母さんが来て飲み物とお菓子を届けてくれた。

「あ、お母さん今から買い物行ってくんねんけど、倫太郎くん今日も食べてく?」
「あ、じゃあ今日もご一緒していいですか?」
「当たり前やん!任せとき!」

そう嬉しそうに言ってお母さんは部屋から出ていった。2人きりになるとすぐに、倫太郎くんは私を強く抱きしめた。頭と腰を固定するかのように力を込めて、私の頭に顔を擦り寄せていた。存在を確認するかのような行動をしてるのか、その行為がしばらく続いた。

「本当に心配した」
「うん、ほんまにごめん」
「違う。謝って欲しいわけじゃない。負い目を感じなくていい。なまえは何も悪くない。けど、あぁいう男もいるって事を忘れないで欲しい」

倫太郎くんは真剣な声で私を諭した。

「全員を疑えって事でもないけど、でももうなまえに同じ事が起きてほしくないから、ある程度は疑いを持って接して欲しい。もう、本当に傷ついて欲しくないんだ」
「倫太郎くん…っ」
「むしろ俺が謝るべきだよ。俺があの場に行ってれば何も起こらなかったって思うと、自分に腹が立って仕方ない」
「それはちゃうよ!倫太郎くんは何も悪くない!」
「なまえはそう思っても、俺が許せない。助けたのも俺じゃなくて北さんだし、俺は後から来たただの出遅れた奴だよ」
「そんな事言わんといてや!」

思わず大きな声が出てしまった。そんな事絶対違うから、倫太郎くんにそんな事言って欲しくなかった。

「私、倫太郎くんがおらんかったらもっと落ち込んでもっともっと立ち直れられへんかった。倫太郎くんがおったから気持ちも安定できてるんよ!だから、そんな事言わんといてや…倫太郎くんが罪悪感を持つ方が辛い」
「なまえ…」

倫太郎くん少し驚いた顔をしていた。倫太郎くんは罪悪感に駆られていたのが少し晴れたようだった。

「なまえ、キスしていい?」
「倫太郎くん、彼氏なんやから許可なんかいらんよ」

そう言うと、笑顔の倫太郎くんから蕩けてしまうほど甘ったるい口付けが降ってきた。唇を啄ばむような口付けをしばらくしていると、力が抜けてきて、腰を抜かすようにベットへ座り込んでしまった。

倫太郎くんはそれでもキスをやめない。次第に口付けは深くなっていき、ぬるりと舌が口内に入ってくる。お互いの乱れた呼吸が耳に入り、自然と淫らなモードになっていくのを感じた。








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