23


なまえの格好を見た瞬間、俺は頭に血が上る感覚があった。まだ何も話を聞いていないのに。

それからなまえに胸を触られたと聞いて、初めて自分の中に強い怨念が湧き上がった。俺がバトン練習なんかサボってればよかったなんて考えは二の次で、今はとにかく近藤への怒りが収まらず、普段こんなにも感情を露わにする事はないのに、それすらも出来ないほど冷静さを無くしていた。

なまえに手を出すなと言われ、それにすら噛みつこうとする俺を、なまえは優しく包み込んでくれた。なまえはいつも俺の味方で俺の事を見てくれる。俺の将来まで心配してくれて、俺にはやっぱりなまえしかいないと確信して、愛しい彼女を抱きした。

なまえを見送り俺は近藤のところへ向かう。倉庫には何故か北さんがいた。何でいるのか気になりはするけど、それよりも今は近藤は床に座って絶望感漂う表情をしていた事に目がいってしまう。なんでお前がそんな顔するんだよ。お前じゃなくてなまえが被害者だろと、再び頭に血が昇りそうになる。

「角名?なんでここに来たんや?」
「コイツに用があって」
「何?俺の事殴るんか?」

何か諦めた顔をして俺を煽ってくる。

「殴らねえよ。お前殴っても意味ねえし、心配してくれるいい彼女もいるからさ」
「へー、そんなええ彼女が他の男に抱かれた気分はどう?みょうじさんってほんまに胸でかいんやな。最高やったわ」
「おい、近藤」

北さんが何かを察したのか、近藤を止めようとしてくれる。わざと俺を煽ってきてるのを察するけど、コイツの思う壺なのも腹立たしいから、俺はいつものように冷静になる。

「一方的で可哀想だなって思うよ」
「…なんでお前なんや!俺の方がモテるしスペックだって俺の方が圧倒的に上やんか」
「それ自分の事しか考えてないじゃん。俺は自分がモテるとかスペック高いとかどうでもいい。なまえを大切にしたいだけ」

そうズバッと言うと視線を下げて項垂れた。コイツもきっとなまえが好きで好きで暴走したんだろう。肯定するつもりはないけど、少し可哀想と同情はしてしまう。

「お前を許す気はないよ。けど、その一途さはこれからいい武器になると思う。方向性さえ間違わなければ」
「っは、安心せぇ。俺はたぶんバレー部も強制退部やろうし退学処分にもなるんやない?」
「お前が学校辞めるのは興味ないけど、なまえの事傷付けた事だけは一生忘れんなよ」
「忘れへんわ、あんな顔されたら」

そう言うと近藤は顧問には自分から言うと言って、俺らの前から立ち去っていった。

「あの子は角名の彼女か?」
「はい、そうです。北さんはなんでここに?」
「バレーボール拭こうかと思って鍵もらいに職員室行ったら、既に鍵あらへんくて。誰か返し忘れてるんやろと思って部室にある予備の鍵持って言ったら、倉庫から女の子の嫌がる声が聞こえて、扉開けたらあぁなっとった感じや」
「…ちなみに、北さんは何を見たんですか?」
「…ええんか。絶対嫌な気になるで」
「教えてください」

なまえがどんな事されてたのか、これで彼女の傷が癒える方法に繋がらないかを探すために聞いてみた。

「…両手首を拘束されて、近藤がズボン下げようとしてる時に俺が扉開けた感じや。上の服のボタンが半分くらい外されてたから、乱暴されたんちゃうかなって思って心配してあの場から離れさせたんやけど大丈夫やったか?」
「はい、大丈夫だと思います…」
「あと、彼女泣いとったで」

北さんから聞いた話を聞いて、俺は肝が冷えた。北さんが来ていなかったら、きっとなまえは無理矢理咥えさせられていたのかと思うとやっぱり近藤に怒りが込み上げてくる。アイツは彼女を泣かせただけじゃない、忘れられない傷を作った。

「お前が今彼女の側におってあげへんとあかんのちゃうか」
「はい、いってきます」

北さんは厳しいけど頼れる人だった。活躍するタイプではないけど、頭に立つ人としては納得のいくような人。そんな人に背中を押され、俺は愛しい彼女の元へ急いだ。








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