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その後、3人でご飯を食べて倫太郎くんは帰った。倫太郎くんは最後に「なまえは気に負う事何もないから、気にせずにね」と励ましてくれた。
放置していたスマホを見ると、絵麻から心配のメッセージが入ってた。絵麻は個別で担任の先生から軽く話を聞いたようだった。気に掛けてやれ、と言われたらしく、私の体と心を心配する言葉が並んでいた。とりあえず、明日は学校に行ってみようと思った。
お母さんからは「無理してへん?」と心配された。いつも通り、には無理かもしれないけど、私には倫太郎くんも絵麻も、他の友達もいる。折角の体育祭もあるし、極力は休みたくはない。
それと、きっと近藤くんは重い処分が降るだろう。
翌日、体育祭前日でチア部は朝練無しのためいつもよりゆっくりと学校へ向かう。教室に入ると絵麻や葉月等クラスメイトが心配の声を掛けてくれた。みんなまだ昨日の事を知らないようだった。一通りみんなの対応を済ませて自分の席に座ると、治くんが私の席に来た。
「角名から軽く聞いたで。大丈夫なん?」
「倫太郎くんから?そっか。うん、倫太郎くんのお陰で大丈夫」
「そっか。さすがスーパー彼氏やな」
「私が選んだスパダリやからな」
「なにそのスパダリって」
訳を知っていても、いつもと変わらぬ態度で接してくれる治くんにはすごく助かる。
「近藤、バレー部強制退部やって」
「…そっか。みんななんで?ってなってへんかった?」
「角名から話聞く前にちょっとだけ噂になっててん。近藤がなまえに手出したみたいな」
最近の高校生の情報網は凄まじい。どこからか近藤くんの話を聞いた人が噂を流し、体育委員の人が近藤くんと私の仕事の事を話したのか話は自然と知れ渡っていたらしい。クラスの子達も気を遣って知らないフリをしてくれてたと思うと、申し訳ないと思いつつとてもありがたかった。
「最低でも停学処分やろうけど、近藤も戻りにくいやろうし自主退学でもするんやない?」
「…どうなんやろね」
「まぁ、なまえが学校来てくれて良かったわ。角名も昨日心配しすぎて顔死んどったで」
「そうなん?」
そんな話をしてると、担任の私の名前を呼ぶ声が聞こえた。先生に着いていくと、職員室の個室のようなところへ通された。そこには教頭先生、学年主任、バレー部の顧問の先生がいた。今からの話題は理解してはいるものの、あまり先生に囲まれた事がなかったから、少しだけ怖気付いてしまった。一礼をして入室し、ソファに腰をかけると最初に教頭先生が声を出した。
「昨日の事、怖い思いをさせて本当に申し訳なかったね。謝っても傷は癒えないのは分かるけども、先ずは謝らせて欲しい」
そう言って、先生達は頭を下げた。その後、近藤くんの処分内容の説明を聞いた。彼は事が事だったので、検討して結果退学処分になったそうだ。また、被害届に関しては私の考えを尊重するとの事だった。もし被害届を出すのであれば、学校側は対応に協力するスタンスとの事だった。
「もう、彼は十分罰を受けたと思うので、被害届は出さへんでもええかなと思ってます」
許す事は出来ないけど、自分のやった事を先生に自白した。きっと悪い事をしたのは分かっているんやないかなと思った。けど、彼が反省の色が見えないようだったら容赦なく提出するつもりではいる。
「そうか。彼のご両親がみょうじさんとみょうじさんのご両親に謝罪をしたいと言ってるんだが」
「分かりました。父は単身赴任なので母のみの対応になりますが、母に聞いてみます」
話はそれで終わりだったようなので、そのまま職員室を出た。教室に戻る途中で友達と歩く倫太郎くんが前にいた。少し早歩きをして倫太郎くんに追いつき、後ろから肩を叩くと驚いたように振り向いた。
「っ!なまえおはよ」
驚きつつ、いつものように挨拶をしてくれた。
「おはよう、見掛けたからつい声掛けちゃった」
隣には祭りの時に会った半田くんと佐竹くんがいて、「みょうじさんや」と呟いていたので2人ともおはよ、と挨拶をした。
「なまえ、ちょっと話そ。先2人教室戻ってて」
「ホームルーム遅れへんようになー」
「遅れたら適当に理由言っといて」
そう言って2人を先に行かせて、私たちは手を繋ぎながら非常階段へ向かう。非常階段に着くと倫太郎くんは私を抱きしめる。
「顔、元気そうで良かった」
「ふふふ、ほんま心配掛けてごめんね。昨日の倫太郎くんのお陰で元気になりました」
「ほんと?やっぱ騎乗位のお陰?」
「っねぇ!学校でそんな話やめてや…!」
「おっほほ、誰も聞いてないって」
そう言って軽く私に口付けを落とす。
「…あんな、近藤くん、退学処分やって」
「ま、それくらい重い処分でも可笑しくないよね」
「私冷たいんかな。処分内容聞いても何も思わへんかった」
「えー、俺なんか退学で嬉しいって思ったんだけど大丈夫かな?」
「…そうなん?」
「なまえにあんな事したんだよ?これでも本当は捕まれよって思うくらいにまではキレてるよ」
倫太郎くんがそこまで熱くなってると思っていなかった。
「まぁでもなまえの意見を尊重するつもりだから口は出さないけど、俺はそれくらいには許せないって思ってるから」
「うん、ありがと」
倫太郎くんはどこまでも私を大切にしてくれる。素直に口にしてくれる事に喜びを感じる。
そろそろホームルームが始まる時間になるので、お互いの教室に戻った。今日は体育祭前日で、明日に向け全クラスが準備と最終練習を各クラス力を入れていた。
うちの学校は校則はあるもののメイク等はそこまで厳しくなく、特に体育祭等の行事の日は大目に見てくれるということもあり、クラスの女の子達はヘアスタイルやメイクについて話していた。
「なまえは明日どうするん?」
「どうしよ。葉月がアイドル扱いしてくれてるしツインテとかしよかな?」
「はづちゃーん!なまえ明日ツインテしよかなやってー!」
「ほんまに!??!?」
「絵麻何で言うねん!葉月!ジョークやから!」
「なんでやー!ツインテええやん!」
女子のキャピキャピした会話に男子が耳を傾けていたらしく、教室の各所から「みょうじさんツインテールすんの?」「俺ポニテ派やねんけど」「何にしろ角名のもんやけどな」と教室中が私の話題となっていた。
何やかんや、昨日の事を思い出さなくてもいいくらい周りが普通に接してくれて、明日の体育祭もしっかり楽しみになった。
「なまえが体育祭来れなかったら、近藤の事ほんまに殴りに行こうかと思った」
「珍しく物騒やん。侑くんの血でも飲んだ?」
「侑くんに失礼すぎやろ」
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