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私は一目惚れってあり得へんと思っとった。

自分で言うのもアレやけど、昔からよく可愛いと言われて育ってきた。小さい頃は、子供はみんな可愛いと言われるその一環だと思ってたけど、小学生高学年でも「なまえちゃんはいつもかわええな。お人形さんみたいや」と言われて、中学生にあがっても「なまえちゃんってほんまかわええよな。余裕でアイドルになれるんちゃう?」って言われてきた。

お世辞やろなとも思ったけど、歳を重ねるにつれ告白される回数も格段に増えた。

いつも言われていたのは「初めて見た時から可愛えと思ってて」とか、「ほんまにタイプでかわええと思っとった」とか。一目惚れなんて見た目だけやん、って。私ワガママやし、連絡もマメやないし、泣き虫やし。そんな姿も知らんのに何が好きなん?って思ってた。

そんな私が、人生で初めて一目惚れをした。

隣のクラス1年4組のバレー部、角名くん。

最初は、気になるだけや好きやない、って自分の気持ちを否定していた。でも否定できんくらい彼の事が気になって、目で追っていた。

自分ではタイプとかよく分からんくて、果たして角名くんがタイプなのかも分かってない。けど、初めて角名くんを見た瞬間、ビックリするくらい心臓が跳ねて体が熱くなった。

角名くんがどんな人かも知らんのに、好きって言ってもええんかなとも思ってた。

初めて親友の絵麻にこの事を話した時、「そんな深く考えんでもええんちゃう?素直になった方が楽しいやろ」って言ってくれて、一目惚れした事を自分で認めた。

けど彼は強豪のバレー部で、毎日バレーに染まってんのも分かってる。こんな恋愛にうつつを抜かしてる暇はあらへんし。だから自分は、彼に片想いをしてるだけでええってブレーキをかけた。

私は割と強豪のチア部に入りたくて、稲荷崎高校に入学した。もちろん迷う事なくチア部に入って、私もガムシャラに部活に集中した。

バレー部の見学も行きたい気持ちもあるけど、自分のやるべき事を疎かにするつもりもない。そもそもチア部の活動もあるから見に行けへんのやけど。

ちなみに、いつも一緒にいる絵麻はバレー部の宮治くんが気になってるらしい。私からしたらもう好きやろって思ってんねんけど、絵麻は認めへんからもうええわ。


「明後日創立記念日で休校の日、全部活休みやん?」
「そやな。なに?カラオケにでも行く?」
「なんかな、全部活休みなんやけど、バレー部はその日神戸第一高校と練習試合があるらしいねん」
「えっ、そうなん?」


同じクラスの侑くんファンから聞いたらしい情報は、うちの高校で練習試合をするとこの事やった。


「人めっちゃ多そうやけど、一緒に見に行かへん?」
「…うん、行きたい」


角名くんのバレー姿はちゃんと見た事なくて、あったとしても体育館の扉から少し見た程度だったから、ちゃんと見れると思うとめっちゃ嬉しかった。


「お2人さん、明後日の練習試合見にくるん?」
「治やん。そうやねん。初めて見に行って見よう思って」
「治くんも出るん?」


突然治くんに話しかけられて少し驚いたけど、なんか角名くんについて聞けんかなって期待もした。


「俺はたぶん出ると思うで。一年やしスタメンやないかもやけど」
「一年生でも他に出る子おるん?」
「ツムも出るんやないかなー。あとは、銀と角名はどやろ?出るかもやけどわからんな」


しれっと角名くんの情報も聞き出せたのはラッキーやった。角名くんの名前が出た瞬間、絵麻の視線を感じたけど無視した。


「なになに、2人もバレー部に好きな人でもおるん?」
「えっ!?」
「そんなんちゃうよー。みんながカッコいい言うから見に行ってみるー?って。普段はなまえもうちも部活やから見に行けへんし」


突然の質問で吃った私を、絵麻はさらっとフォローしてくれた。


「ふーん。まぁ絵麻となまえが来てくれたらバレー部むっちゃ喜ぶやろうし、みんなやる気も出してくれそうやわ。来れそうな時あったらまた来てや」
「そんな私ら価値あるもんやないけど」
「吹部もチア部も部活まみれやからなかなか行けへんけど。明後日の練習試合次第やな」
「それみんなに言うとくわ。たぶん死ぬ気でみんな頑張りそうやわ」


治くんはバレー部やし顔も整ってるからモッテモテで、最初は話しにくい人なんやろなって勝手に思っとったけど話てみたら気さくで話しやすい人やった。

とりあえず明後日の練習試合が楽しみだった。今までの恋愛はほんまに恋愛やったんかなって思うくらい角名くんへの気持ちが大きくて、この気持ちが恋というなら、私の初恋は角名くんやと思う。






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