38




今年のクリスマスはお互いしっかり部活でゆっくりできる時間が無かった。その代わりと言ってはなんだが、バレー部は春高直前ではあるが、年末年始12月31日午後から1月2日だけ休みがあるらしく、その休みに一緒に愛知の実家に行かないかとの誘いがあった。

お母さんに話をすると「向こうのお家に失礼のないように!手土産はお母さん用意するから!」と気合が入っていた。

実家に行くと言っても31日〜2日までの2泊と短く、角名家も私と会えるのを凄く楽しみにしているようだった。

緊張する私に対して倫太郎は「うちの親はほんと緊張するような親じゃないから大丈夫」と言ってくれた。それでもやっぱり緊張はしてしまう。

あっという間に愛知に行く日になった。お母さんが私と倫太郎を駅まで車で送ってくれる。倫太郎はきちんとお礼をいい車から降りていた。2泊だけなのでそこまで大荷物にはならなかったのが幸いだ。

新幹線で名古屋まで行き、そこから電車に乗り換えて倫太郎の家の最寄り駅まで行く。私は慣れない場所に戸惑い、倫太郎は慣れた様子でリードしてくれる。名古屋駅構内を歩きながら角名家の事をいろいろと教えてくれた。

「母さんはよく喋るからうるさいかも」
「父さんはどちらかと言うと静かだけど怖い感じではないから」
「妹はお姉ちゃんが欲しいって言ってたからめっちゃ懐くかも」

倫太郎の育った家庭は温かそうで、緊張と共に楽しみにもなってきた。聞き慣れない路線に乗り換えて最寄り駅へ向かう。駅から家は徒歩圏内らしく、迎えに行こうかと言われたらしいけど断って歩いて向かうことになってる。たぶん、倫太郎が緊張している私に気を遣ってくれたのかなと思った。

最寄り駅に着いて歩いていると、倫太郎が通っていた小中学校やコンビニ、思い出が詰まった通学路等いろんな話を聞かせてくれた。どれも新鮮で楽しく、倫太郎の新しい事を知れて嬉しかった。

あっという間に家に着いて、鍵を開けて中に入る。

「ただいまー」
「お、お邪魔します!」
「おかえり!遠くまでお疲れ様」
「初めまして。倫太郎くんとお付き合いしていますみょうじ なまえです。3日間お世話になります」
「わー!なまえちゃん!初めまして。倫太郎の母です。本当に可愛い顔してるね〜。倫太郎よく頑張ったじゃん!」
「い、いえ!そんな…!」
「もううるさいよ。中入れてよ、外寒かったんだから」
「ごめんごめん、なまえちゃんも寒かったよね?部屋で温まって!」
「はい、ありがとうございます!」

お母さんは倫太郎の言う通り明るく話しやすそうなお母さんだった。リビングに通してもらうと、お父さんと妹さんがいた。

「お、遠くからわざわざありがとうね」
「わー!なまえちゃんだー!めっちゃ可愛い!お兄ちゃんの彼女と思えない!」
「うるさいよ」
「あ、あの、初めまして。みょうじ なまえです」
「ははっ、倫太郎の父です。そんなに畏まらないでいいよ」

お父さんと妹さんにも会えて少し話したけど、すごく話しやすくて緊張は少し解れた。

手土産のお菓子を渡して、母がよろしくと言っていた旨を伝えると凄く喜んでくれた。

「倫太郎、ちゃんとなまえちゃんに優しくしてる?」
「うるさいなぁ」
「ふふ、凄く優しくて頼りにしています。倫太郎くんがいてくれてほんまによかったです」

そうお母さんに伝えると、なんだか泣きそうになっていた。

「なまえちゃんみたいないい子が彼女で本当に安心した。高校から親元離れて大丈夫かなって心配してたから」
「倫太郎くんは友達にも恵まれてるので。倫太郎くんの人柄の良さに皆んな集まってくるんだと思います」
「そっか、それなら良かった」

妹ちゃんからは「お兄ちゃんなんかのどこがいいのー?」なんて質問が飛んできて、倫太郎が「まじでそうゆうのやめて」と可愛い喧嘩をしていた。

初日は家でゆっくりしつつ年越しに向けて準備をした。もちろんお手伝いは積極的に動いたつもりだ。

夜ご飯はすき焼きで、その後お風呂をいただき年越しまではリビングでテレビを見たり、うちの家族構成や部活の話等お話をしたりしていた。お母さんには普段倫太郎くんと呼んでいない事がすぐにバレた。そこからお言葉に甘えて普段通り倫太郎と呼ぶ事にした。

「なまえ ちゃんはしっかりしてるからだらしない倫太郎にピッタリだ」
「いえいえ!ほんまにそんな事ないです。倫太郎の方がしっかりしてると思います」
「そうかなー?家だと、ほら見て。寝てる」

そう言われて倫太郎を見ると、ソファでスマホを見ながら寝落ちしたようだった。妹ちゃんにも「お兄ちゃんだらしない」と呆れられていた。

「バレー部の練習激しいから疲れ溜まってたんですかね?」
「なまえちゃんは優しいね。倫太郎の事支えてくれてありがとうね」
「いえ、むしろ私が支えてもらってるので。私が倫太郎を支えれてたら嬉しいなとは思ってます」
「大丈夫、倫太郎にとってなまえちゃんは本当に必要な子なんだと思うよ。倫太郎から紹介したい子がいるなんて言われて本当ビックリしたんだから」
「ね、お兄ちゃんそうゆうの家族に言わなさそうな人だし」

妹ちゃんもお母さんに賛同するように言った。確かに倫太郎はお母さんに当たりが強かったり、THE男子高校生のような思春期真っ只中のような気がした。それでも私を家族に紹介したいと言ってくれた事は、今思えばなかなか凄いことだと思った。

「なまえちゃんみたいな子と一緒にいるなら、遠くても安心できるわ。手のかかる子だけど、これからも一緒にいてくれると嬉しいな」
「もちろんです。こちらこそたくさん助けられてるので一緒にいたいと思っています」

お母さんは優しく瞳で微笑んでくれた。妹ちゃんとは2歳下という事もあり、割と話が合うようだった。本当の妹のようですごく可愛くて、また私にも懐いてくれていた。

年越しの少し前に倫太郎は目を覚まし、角名家と一緒に年越しをした。明日は倫太郎と2人で初詣に行く予定のため、私達は先に部屋に行く事にした。倫太郎の部屋はThe男の子の部屋で、バレーの表彰状やメダル、漫画やフィギュアが並べられていた。

倫太郎が使っていたであろうベッドの隣に敷布団が準備されていて、わざわざ私のために寝床も用意してくれていたようだった。

「リビングで寝ちゃってごめんね。母さんと妹に質問攻めにされて困らなかった?」
「全然大丈夫やったよ。みんな優しくて明るくて素敵なご家族やったから、私も大分気持ち緩んでたし」
「それならよかった。母さんも妹も、なまえの事すごい気に入ってたみたいだから」
「ほんまに?嬉しいわぁ」

少し倫太郎と話していると溜まってた疲れが一気にきて眠気に襲われ、私の意識は一瞬で夢の中に落ちていった。

朝気がつくと時刻は6時半だった。まだリビングの方から音は聞こえてきていないため、恐らくまだ誰も起きていないみたいだった。倫太郎もまだ眠っているし、大人しくスマホを触る。グループメッセージ等にあけおめの連絡がいくつか来ていた。侑くん達とのグループにも連絡があったので、私もスタンプと一緒にメッセージを送った。

去年は倫太郎に一目惚れをして付き合った素敵な一年になった。今年もどうか幸せに過ごせる事を初詣で祈ろうとぼんやり考えた。









BACK
TOP