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翌日の試合も稲荷崎が難なく勝つ事ができた。倫太郎も活躍の場があり、会場が湧き上がっていた。倫太郎も人気になっていくのかなと、勝手に少しだけ寂しくなってしまった。
試合後、倫太郎から「南階段の非常口前」と簡潔に連絡があった。素早く指定の場へ向かうと、そこは会場の端で人気があまりなく穴場のようなところだった。
私が到着した後すぐ、倫太郎が来た。
「倫太郎、お疲れ様。むっちゃかっこよかった」
「ありがとう。なまえとのデートの約束で頑張れたよ」
「ふふふ、それは良かったわ」
倫太郎は私の隣に来て自然と手を繋いできた。
「ここ、基本誰も来ないんだ」
そう小さな声で言うと、倫太郎の顔が近付いてくる。
「キスしていい?」
「私もしたかった」
「マジで可愛い」
スイッチが入ったかのように倫太郎は私に荒く口付けをする。さすがに優しいキスだけかと思いきや、舌を挿れて角度を変えるようなキスを繰り返す。倫太郎は口付けをしながら私の体を撫で回すように手を動かす。場所が場所なら今から行為が始まるのではないのかと思うような触れ合いで、私もゾクゾクしてきてしまった。
「っやばい、ごめん。止まんなくなりそうだった」
倫太郎はハッとしたようにキスを止め、私に謝った。
「マジで部屋だったらシてた」
そう言った後軽く口付けをして、続きはデートの時ねと妖艶な笑みを浮かばせていた。時間もあまりないため、手を繋いでみんなの元へ戻る。バレー部は別の場所に集合してるため、途中まで手を繋いで歩く。
「あ」
「あ」
「…誰?」
昨日からよく会うトサカ先輩…黒尾さんと最初の時にもいた猫背の子とばったり会った。
「どうも。彼氏?」
「はい、彼氏です」
「さっき試合出てた子じゃん。なまえちゃん彼氏いたんだ」
「なまえ、誰?」
倫太郎から感じる初めての声色で、少しだけ怖くなった。
「昨日ぶつかっちゃって」
「んで、名前教えたの?」
「そんな責めてあげんなって。名前は俺が聞いたの。気になったから」
「残念だったね。見ての通り俺の彼女だからもう話しかけないでもらえる?」
「ぶははっ、まぁこんだけ可愛い彼女いたらそうなるよな。わかるわかる。安心してよ、連絡先とかは我慢するから」
じゃあね、と言ってこの冷え切った場から颯爽と立ち去る黒尾さんと猫背くん。
「ナンパされてんじゃん」
「連絡先聞かれた訳やないしもう会わへんと思っとったから…ごめん」
「興味ない人の名前なんて聞かないでしょ、普通。あーゆうタイプは徐々に距離詰めていくタイプなんだよ。もう、気を付けてね」
倫太郎は純粋に心配してくれたようだった。けど、いつもと違う声色と視線が頭から離れなかった。倫太郎はきっと本気で怒るとかなり怖いタイプなんだと思う。付き合って半年ほど経つが、まだまだ倫太郎の事は分からない事が多い。
最近は以前に比べ嫉妬深くなってる気がしてる。それに関しては自分も同じようなもんだから気にはなってないけど、クールで無気力そうなイメージだったからこそ、嫉妬深いのが意外な感じがした。
応援組の集合場所の近くまで送ってもらい倫太郎と別れる。ほとんどの人が集まっていて、もう集合時間ギリギリだった事に今気がついた。
その後旅館へ戻り、次の日に備えた。
▽
翌日からの試合も着々と進んでいったが、準決勝で優勝候補の学校相手に初めて黒星がついてしまった。
その後の3位決定戦では勝つ事ができ、結果は惜しくも3位となった。IH同様、素晴らしいけれども選手たちからすると悔しい結果で春高を終えた。
春高を終え、数日だけ残ってる冬休みで倫太郎と約束していたデートをする事になった。前から私が行きたいと言っていたカフェに行き、その後は倫太郎の部屋に行く予定だ。
カフェは少し混んでいたけど20分ほど待つと席へ案内された。1番の人気メニューを頼み注文品が来るまで春高等の話をしながら待っていた。
「冬休みあっという間やったね」
「バレー部はほぼ部活だったよ」
「課題やったん?」
「やってない」
「ダメやん」
「なまえの課題見せて」
「まぁええけど」
そんな話をしていると注文した物が届いた。倫太郎は素早く写真に収め食べ始める。人気なだけあって美味しく、量も女子からするとちょうど良くて満足だったけど、よく食べる倫太郎からすると足りなさそうだった。
お会計を済ませて店を出て少し街中を歩く。特に目ぼしい物がなかったため、コンビニでお菓子を買い倫太郎の部屋に向かう。寮対策のためにキャップをカバンに忍ばせてきたため、寮の門から倫太郎の部屋まではキャップを被って歩く。
「お邪魔します」
「どうぞ」
相変わらずシンプルで物が少ない大人びた部屋だった。部屋に入るとすぐに倫太郎は私を抱きしめる。
「あー、早く触りたかった」
「んふふ、私も」
そう言うと倫太郎は嬉しそうに笑って私にキスを降らす。それが合図で一気に甘い空気に変わった。
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