アッパレ!ヒッパレ!ファンファーレ!

この夏のとっておきのヒットナンバーだけを並べ尽くしたミュージックプレイヤーから熱をイヤホンで耳へと流し込んで、そうしてようやくわたしの夏が始まりを迎える。
先日買ったばかりのサンダルは去年までの背伸びをした可愛い高いヒールじゃなくて、しっかり足首にまでベルトのついたものにした。ショッピングモールの大手靴の小売チェーン店であれこれ言いながら最後には二人でいっせーので指差した、二人で揃いのしっかりした作りのスポーツタイプのものだ。
きっとこれを履いた今年のわたしたちは去年よりも、もっともっと多くの場所にだって行けてしまうだろう。

この夏をちょっとだけトクベツに。
そんなどこかの広告のセリフのようなことを思い立った瞬間から、わたしたちの計画は始まったのだ。
なにをしたらいいだろうかって言い合って、それならやってみたいこと、行ってみたいところ、食べてみたかったもの、話題の場所に人気の遊び、全部出し合ってやり尽くしたらきっとトクベツになるに違いないって言って、二人で手を叩いたのだ。

全身に余すことなくしっかり日焼け止めを塗ったし、いつものよりもバッチリ目元にラメを乗せた。つばの広いカンカン帽にはさわやかな空色のリボンが眩しくひらめく。長期休暇中は叱る先生だっていないから、いつもはこっそり足だけにしているマニキュアだって、昨日の夜に両手の指先にも乗せてきてしまった。トクベツな夏をお迎えする準備はもう万端なのだ。
さあ、今日のわたしたちは、一体どこへ行けるだろう。

「お、来たな」
「ゴメン、お待たせ」
「待ったから飲みモンおごりな」
「仕方ないな〜、なに飲む?」
「ばか、冗談だよ。行こーぜ」
「あいあい」

ゆったりした薄い生地のシャツとラフなパンツでキメた千冬も、すでに夏の準備はばっちりのようだ。
水族館に博物館、海に水着に花火に熱いラーメン、花火大会にお祭りの縁日、カラオケにボーリングに遊園地、公園のキッチンカーのジェラートも汗っかきのレモネードも、薄い生地のワンピースもひまわり畑にお部屋のクーラー下での課題たち、すべてすべてのものたちが、この夏をわたしたちとともに待ち受けていてくれる。

おそろいのサンダル柄の日焼けあとをつけて、同じ場所、違う角度の写真が携帯の容量を圧迫して、折角だからアルバムだって作ってみようか。
夏の間に終わらなかったらどうしようかって言ったら、そしたら秋にも冬にも持ち越して、秋も冬もトクベツにしちゃえばいいだろって笑ったから、いつもはちょっと物悲しい夏の終わりだって輝かしい大勝利の姿がすでにひょっこり顔を覗かせている。
さあ、今日のわたしたちはどこへ行こう。この夏を、どんな夏にしてしまおうか。

- 41 -
「卍関全席」肩凝り回避用ページ