「ーーーはぁ……。」

ぽかぽかと暖かい日差しが差す昼。

そんな陽気な雰囲気の中には似合わない溜息が真選組屯所内に響いた。

溜息をついていたのは、ひと際どんよりしたオーラが目立つ、観察方の山崎退だった。

「たっく…副長ったら人使い荒いんだから…」

そう山崎は、副長に押し付けられたのであろう資料の山を両手に抱えながら再び溜息を吐く。

すると、突然後ろからぶつかられたような衝撃が背中に走った。

「うわっ!?」

予想外の出来事に驚き、そして倒れていく山崎。

無残なことに、山崎の抱えていた資料たちは廊下に舞っていった。

流石の山崎も自分に押した犯人に向かって後ろを振り返りキッと睨みつけた。

「やっほ、山崎さん! …ってあれ?」

そこにいたのは、悪気はなさそうな笑顔で手を振っているなまえであった。

しかめっ面の山崎を見たなまえは不思議がるが、山崎の前に落ちているものを見てアワアワし始めた。

「う、うわっ!! ごめんなさいっ!! し、死んでお詫びをぉっ!!」

「ちょっと! 落ち着いてなまえちゃん! 大丈夫だから」

わりと本気で切腹しようとしているなまえを慌てて止める山崎。

しばらくしてから、やっとなまえは落ち着いた。

「ホントすいません…ご迷惑を掛けるばかりで…」

なまえは、しゅんと肩をすぼめながら謝る。

「いや、いいよ。俺の不注意もあったし」

そういいながら山崎は落ちた資料を拾い集める。それを見たなまえも慌てて拾い集めた。

*

「これで全部ですね…」

なまえも集めてみて分かったのだが、山崎に課せられた資料の量は半端なかった。

ほとんどが、どこぞの二人組おきたたちの始末書ばかり。

「山崎さんも大変ですね」

「あ、うん。慣れているから大丈夫だよ…って言いたいけど結構きついかも」

笑いながらも苦しい表情を浮かべる山崎。忙しいときに後ろから押され倒された挙句、資料まで散らかしてまったなまえは何だか後味の悪い気持ちになってしまった。

「私にもお手伝いさせてください」

山崎さんにもお世話になっていますし、となまえは山崎の持っている資料の半分を取る。

「えっ、いいんだよ! なまえちゃんは今日休みなんでしょ?」

「いえ、私はもう十分休んだので、山崎さんが休んでください!」

断ろうとする山崎に対して少し強引に言うなまえ。

ほわわんと満面の笑みを浮かべている、そんな姿を見ていたら何だか気が抜けてきた。

「……んじゃ、お言葉に甘えて休んでもいいかな」

根気負け…といったところか。

山崎の返事になまえは、ぱあっと明るく綻んだ。

「はいっ!」

ーー山崎の自室内。

「んで…結局俺が書くんだよね〜…」

大きな溜息を吐く山崎。本日三回目である。

「でもまぁ…いっか」

(可愛い寝顔が見られたし…)

そう山崎は、すやすやと寝息を立てているなまえの頬をひと撫でし静かに微笑んだ。

癒しのひととき
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