「ソフトクリーム」
私の小さい一言に、早川くんは振り返った。表情のない顔でこちらを見ている。
「買って」
「好きなんですか」
「別に」
「じゃあダメです」
「なんでよ、天使くんには買ってるじゃない」
駄々をこねればため息をつかれる。でも、彼は素直にアイスクリームを買いに行った。手渡されたのは、水色のそれ。
「この味は夏限定なんだよ」
だから食べたかったの、そう言っても興味なさげに「そうですか」と返される。
「冬にも限定の味があるんだよ」
夏はラムネ味で、冬は生チョコレート味らしい。期間限定だから、当然、その時にしか食べられない。その時を逃せば、もう――
「私、来年もこの味を食べたいな」
「食べればいいじゃないですか」
「また買ってくれる?」
彼は私の顔を見て、黙った。残暑が厳しいけれど、夏はもう終わる。アイスが、溶けそう。
「……いいですよ」
表情を変えずに言った早川くんが、私に背を向ける。無理って言わないの、なんて。
彼が言わないのに、私が言えるわけなかった。