※文化祭の出し物ネタ
※今後の展開が分からないので完全にパロディ・フィクションです
※本編終了後のお話






いくら雄英と言えどもきちんと高校である。と、こういう年間行事が発表されるとしみじみと実感する俺なのであった。

「文化祭、なぁ……」

HRで先生からバトンタッチされて出し物の案を募ってる学級委員を眺めながら、ぽつりと呟く。ここのところ色々あってバタバタしてたから、こういうほっこりイベントは久しぶりな気がする。
ヒーロー科も、なんか出し物するんだろうか……。
なんて考えてる時に上がったお化け屋敷!の声に、爆豪がお化けの格好をしてるところを想像してしまってニヤけてしまった。大半の人に怖がられる爆豪だけど、うん、これはかわいい、と思ってしまって末期だなと思う。

「海人くん、気持ち悪いですよー」
「っせー……見てんなよ……」

最近席替えして距離が近くなった佐野がニヤニヤしながら声を掛けてきて、慌てて手で顔を覆った。あーこれ絶対考えてた事バレてる。はずい、しんだ方がいいかもしれない……。
案の定お見通しだったらしく、らぶらぶかよって笑われたから消しゴムを投げたら避けられた。んだよもう!

「はいそれじゃあ色んな意見が出てまったくまとまらないので!本番までに色々と試してみましょう!折角ですし!」

あらぬ方向に飛んでった消しゴムを回収しに行ってたら、委員長の高らかな宣言が聞こえてきた。ぶん投げたな、さっきの消しゴムみたいに。
なんて、あほみたいな事を考えてたからダメだったんだと思う。今思えば、この時にもっとマシな案を自分で出しておけば良かったと悲しむのは、もう少しあとの話だ。






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「つらい、かえりたい」
「なんでー?絵藤くんすごい似合ってるのに?」
「だからこそかなーーー違和感なく仕上げてくるサポート科の技術が憎いーーーー」

遠い目をしながらそう言ったら、クラスメイトの女子が軽やかな声で笑った。
こういうのは可愛い女子達の担当だろう……って思うのに、なんで俺……。せめてもっとガタイあって、ネタに出来そうな男子にすればいいのに……。

「大丈夫だよ、ギャグ要員の男子も居るから」

なんて、俺の嘆きに対して語尾にハートでも付きそうなくらいの声音で言われてしまえば、というかそもそも、俺には拒否権なんて最初から無かったんだ……。
げんなりしながら女子と話していたら、がらりと教室の扉が開けられた。人間、音がすれば気になって見てしまうもので、反射的に振り返った事をすぐに後悔した。

「…………」
「…………」

そう言えば今は放課後だった。そして俺は放課後、夏物一掃セールとかやってないかなー見に行こうか一緒に、とか言ってた。誰とってそりゃあ勿論今目の前で扉を開いたまま固まってる問題児とですよ。

「…………絵藤居るか」

なんて声を掛けたものかなこれは、とか一瞬の間に色々考えてたのに、当の問題児こと爆豪から発せられた言葉はまさかの俺を探すものだった。いや、え?目の前に居ますけど?
隣に居た女子もきょとんとした顔をしていて、まぁそうなりますよねっていう感じ。
そりゃあ、ロングヘアーのウィッグ被ってばっちりフルメイクで、その上ふりっふりのメイド服を着てる奴が俺だなんて事はまったく微塵も認めたくないのかもしれないけれども!サポート科デザイン専攻組が全力で男だと分かりそうな間接部分とかを違和感なく、絶妙に可愛く隠してるから分かりにくいかもしれないけれども!それでも!

「ばくごー?」

分かれよ!と思いつつ、苦笑いでひらひらと両手を振ってみた。

「あ?」

多分声で分かったんだろう。目が合った爆豪の顔が、どんどん険しくなっていったのは流石に面白かった。眉間の皺がめちゃめちゃ深い。

「何しとんだテメェ!」
「あっはっは!それは俺が聞きたいくらいだわ!」

くわっと怒鳴られて耐え切れずに声を出して笑ってしまった。
俺だと分かるともう遠慮しなくなったのか、ずんずんと教室内に入ってくると思いっきり脳天にチョップを食らわされた。

「い、って!」
「妙に似合っとるんが余計むかつくわ!」

理不尽な理由で叩かれて痛む頭を両手で抑えながら、恨めしげに爆豪を見れば舌打ちされた。えーいや、ひどくない?
なんとなく意趣返しがしたくて、涙目でシナを作って抗議してみる事にした。

「ひどいかっちゃん……こんなか弱くて可愛い女子に……」
「かっちゃん言うんじゃねぇ!どこがか弱い女子だぼけ!つうか普段の方が何倍も可愛いわ舐めとんのかあぁ!?」
「ちょ、あーあのばくごー此処教室です……」

なんか知らんけどブチ切れてしぬほど恥ずかしい台詞を放った爆豪に俺が撃沈した。
顔を覆ってしゃがみこんだ俺の背中を、隣の女子……横井がやんわりと撫でてくれて、クラスのみんなにはお察しされてるのは何となく分かってたけど完全に生暖かく見守られている感がひしひしと伝わってくる。とりあえず恥ずかしいやめて……。

「で、てめぇは何でんな格好してんだ」
「あぁこれ、今度の文化祭でメイド喫茶とかどうかなーって話出てて、それのお試し中なの」
「は?却下だわ」

俺に対しての質問に答えてくれた横井に即却下が下された。理不尽大魔王かよ。
サポート科だからご奉仕なんだよって横井の言葉に、こいつの奉仕は俺限定だわとか爆弾のオンパレードでもう痒い、むり。
これ以上放っておいたら色んな意味で立ち直れなくなりそうなので、スッと立ち上がって爆豪の腕を引っ張って教室を出た。横井には悪いけど限界です。

「おいてめぇ何す…」
「もうやめて恥ずかしいしんじゃう」
「……もう十分恥ずかしい格好してんだろおめぇはよ」

それはそうなんだけど、それは俺が我慢すればいい事で、甘痒い事を教室で散々言われる事は耐えられない、という事をつらつらと告げれば、俺はおめぇがんな格好してる事が耐えられねぇんだよって返されてまた顔を覆う羽目になった。
とぼとぼと歩く足を止めて、かんべんして、って呟くと舌打ちが返って来た。

「はぁぁ……着替えてくる……」
「あー待て」
「へ……、ッ!?」

もう多分これは言い合いをしてもどうにもならないと思って、早々に切り上げようと踏み出した足を引きとめられた。放課後の誰も居ない廊下の片隅で、ぐいっと腕を引っ張られて触れた、唇。

「俺以外にんな格好見せてんじゃねぇよアホ」

じゃ校門居るわ、ってカバンを持ち直してさっさと歩いていった爆豪に何も言葉を返せなかった。なんなんだ。意味がわかんない。イケメンかよくそ。

その場で動けずにぼーっと突っ立ってた俺を発見した横井に赤くなった顔を笑われたのは、また暫く経ってからの事だった。







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