※付き合ってます





ガサガサと鳴る紙袋を片手に、急ぎ足で廊下を歩く昼下がり。向かう先は、もう今では恒例となった校舎裏だ。
時間を確認しようと携帯の画面を見れば、爆豪からLINEが来てたからすぐに返信する。

「(オレンジかりんごどっちだ)」
「(んー、りんご!)」
「(了解)」

歩きながら交わした短いやり取り。飲み物無いから買わないとなって思ってたけどこれで手間が省けた。
今日は天気が良いから、外で昼ご飯食べるのは絶対気持ちが良いだろうなって胸が躍る。

「あ、早いな爆豪」
「てめぇがおせぇだけだろ」

角を曲がって校舎裏に到着すれば、もうすでに爆豪が居て驚いた。
こいつジュースも買ってなかったっけ……、何で俺よりはえぇの?

「えーおれ結構急いで来たんだけどなー」
「あ?なんか急ぐ理由あんのかよ」
「爆豪に早く会いたかったから」

いつものベンチに座りながら何気なくそう言えば、ジュースを飲もうとしてた爆豪が固まったからにやっとする。付き合って暫く経つけど、こういう不意打ちに弱いとこ案外可愛いと思うんだよな。
つっても固まるのは一瞬だけで、多分他人から見たら気付かないくらいだと思うけど。

「笑ってんじゃねぇよあほ」
「うへ、やーついね、つい。……っとそうだ、今日これ持ってきたんだけどさ、爆豪パン嫌いじゃなかったよな?」

じとっと睨まれるけど耳がちょっと赤くなってるのが嬉しい。俺の事ちゃんと好きで居てくれてんだなーって思えるから。
なんて思いながら、持って来てた紙袋を開けて中身を取り出す。
朝のうちに連絡して、今日は購買でお昼買わないように伝えてたから、俺の手料理とか期待してたかもしれないけど、もしそうならごめんって感じのやつ。

「サンドイッチ?」
「そー、弁当じゃなくてわりぃね。母親がさ、ホームベーカリー買って来て食パン作るとか言い出してさ」

タッパーの蓋を開けて、二人の間に置く。定番のBLTサンドと、卵焼きサンド。
男二人分だしと思って結構量作ってきたつもりだけど、足りるだろうか。

「あ?じゃあこれお前の親が作ったんか」
「いやー、それがさ、あの人めちゃくちゃ段取り悪くて、結局パン焼いたの俺!しかも焼けたら食うと思うじゃん?寝てやがんの!」

忙しいから眠いのは分かるんだけどさぁ、と続けて笑えば、爆豪も笑う。ほんっと、我が親ながら自由だよ。
おもむろに手を伸ばしてサンドイッチを口に運んだのを見届けて、俺もひとつ手に取る。うめぇかなー、うめぇと良いな。

「まぁ、俺は絵藤の手作り食えて良いけどよ」
「んぐっ」

頬張った瞬間そんな事を言われて、危うく喉に詰まらせかけた。にやにや笑いながらりんごジュースを渡してくれたけど、犯人お前だから……!

「うめぇわ」
「……けほ、…そりゃどうも」

顔が熱いのはきっと喉に詰まらせかけたからだ。
絶対まだにやにや笑ってるだろうから爆豪の方は見れなくて、小さく長い息を吐いた。絶対さっきの俺に対する仕返しだ、やったらやり返すんだもんなこいつ。

「おい」
「え……?」

ぐいっと顎を掴まれて強制的に振り向かされて、瞬きをした次の瞬間には、目の前に赤い瞳。ぺろりと口の端を舐められたかと思えば、柔らかいものが唇に触れて、はむ、と一瞬噛まれた。

「マヨネーズ入れすぎなんじゃねぇの」
「……ッ!?」

至近距離でにぃっと笑う爆豪がイケメン過ぎて、今何が起こったのか分かるまで数秒かかった。マヨ……ついてたの、か……?
ついさっきの出来事を頭で理解した途端にぶわわっと熱が上がってきて、きっと、多分、いま爆豪に爆破された。

「こ、ここっこ、ここ!がっこう!!!」
「っせぇんな事知ってるわ」
「知ってたらちゅーとかしねぇの!!!」
「まじうるせぇ襲うぞてめぇ」

俺の抗議も聞かずにくつくつと笑う爆豪には全然敵わない。誰かこのヒーローらしからぬヤツどうにかしてくれ!

「外とかむり!!」
「あ?じゃあ教室なら良いんかよ、行くか?」
「ちっげぇばーか!!!!」

顔の熱が一向に引かなくて、手元にあったタッパーの蓋でチョップしたら普通に喧嘩になってしまった。
昼休みが終わる直前に慌ててサンドイッチを詰め込むハメになったのは、爆豪が全部悪いと思う……。






前へ次へ