※付き合ってからのお話




「うぇーい!オーライオーライ!」

バス!と打ちあがるビーチボールを追ってきゃあきゃあとはしゃぐ女子達。そんな癒しの空間を、悠々と日陰から眺めるのは中々良い。

雄英から電車に乗って少し。そこに穴場のビーチがあると言っていたのは、今まさに女子とはしゃいでる上鳴で、海が似合うねぇチャラいねぇなんて感想しか出てこない。
しっかし、ただでさえ暑いこの炎天下で、よくあんだけ動けるわ……ヒーロー志望の体力すっげぇな……。

「大丈夫か?絵藤、熱中症とかなってねぇ?」
「あーや、それは大丈夫。さんきゅ切島」
「ならイイけどよ、無理すんなよ!」

ぽたぽたと水を垂らして、海にでも入ってたんだろうな。パラソルの下で休憩してる俺を心配して来てくれたらしい切島が、そう声を掛けてくれた。
俺が何ともない事が分かると、ビーチバレーをしてるメンツの方へ走っていく。眩しいくらいの笑顔を置いて。っつーか良い身体しやがってくっそ腹立つな。
羨ましいなちくしょうなんて思いながら砂浜を眺めると、芦戸が高く放ったボールと、それを追って盛大にスッ転んだ上鳴が見えた。

何で俺がこんな所に居るのか、それは一昨日の上鳴の発言が発端だった。





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「夏だしよ、海とか行かね!?」
「は?」
「行かねぇ」
「即答!?何でだよ!?」

俺と爆豪と上鳴が食堂で飯を食ってた時、珍しく静かに携帯を弄っていたかと思えば、唐突にそんな事を言い出した。今一緒に居るメンツを見れば、おー行こうぜ!とかならないの予想出来るだろ普通、って思うんだけど、上鳴には出来ねぇんだろうな……。

「んでんなもん行かなきゃなんねぇんだよアホか」
「いーじゃねぇかよ海!夏だぜ!?楽しもうぜ!?なぁ絵藤!」
「いやーあっちぃし俺もパス」

なぁんでだよぉ!って泣き真似をし始めてちょっとうざい。
ずず、と手に持ってたパックジュースを飲みながら、この状況をどう収めようか悩む俺をよそに、隣の爆豪はもうその話題に興味を失くしたらしい。手元の携帯を操作しながら器用に飯を食うのを再開してる。おい行儀悪いぞ。

「ほらぁ!此処穴場なんだって!女子とかも誘ってさぁ、行こうぜ海!?なぁ!」
「お?海か、いいな海!」
「だーろー!?さっすが切島!なぁこいつらも説得してくれよ!」

おーいまじか、って半笑いになってしまったのはしょうがないと思う。
後ろから定食のトレイを持って現れた切島が話に乗ってしまって、話の腰を折るタイミングを失くした。困った、これは困った。
更には近くに居た麗日達も巻き込んで盛り上がってしまい、あれよあれよと言う間に海行きが決定してしまった。それはもう不本意ながら、俺が行く事も。

「いや、俺はパスだって……」
「どうして?絵藤ちゃんも行くでしょう?友達だもの」
「あーえー……?」

そんな蛙吹の純粋無垢な期待の眼差しに根負けした俺も俺、だけど。

「てめぇが行くなら俺も行く」
「え……」
「まじかよ!?」

俺が行くならとか言い出しちゃった爆豪も爆豪、だと思う。いや、それはさぁ嬉しいんですけどね??





∞----------------------∞





そんな風に流されるまま海に来たけど、なんだかんだ言って皆で遊ぶってのはやっぱ楽しいもんで。はしゃぎすぎてバテましたってオチな訳だけども。

「おら」
「うわっつめた!……なに、買ってきてくれたん?」
「俺が飲みたかっただけだ、勘違いすんなあほ」

急に頬っぺたに冷たさを感じて驚いて振り返ると、キンキンに冷えたスポドリと爆豪。どうやら買って来てくれたらしいそれを受け取ると、何でかむすっとしてる爆豪も隣に座った。
どうしたんだ?と思いつつもペットボトルを開けようとしたらするっと開いて、あ、これ開けてから渡してくれたんだなって分かって顔が緩んだ。ほんっと見かけによらずそういうとこ優しんだからこいつ。

「さんきゅ!」
「勘違いすんなっつったろうが」

にへっと笑ってお礼を言えば、爆豪の素直じゃない返事が返ってきた。うはは、これ絶対照れ隠しだろ!機嫌悪そうなのも、もしかして心配してくれたからとか?都合良いかもしれないけど、だったら俺は嬉しい。

「おれ、お前のそういう素直じゃねぇとこも好きだぜ」
「はぁ!?っせぇよぼけ!!」
「なんだかんだ優しいとこもなー」
「だからうっせぇつってんだよぶっ飛ばすぞ!!!」
「うはは!」

このくそあっちぃのに掌をボンボン爆発させる爆豪は暑くねぇんだろうか。なんて思いながら笑う俺と青筋を立てる爆豪は、端から見たら変な組み合わせだろうなと思う。

「っとにテメェは口が減らねぇ!!」
「あはははは!おめぇそれ暑くねぇんぶぇふあ!?」
「わーりー!絵藤無事かー!?」
「おいこらクソ髪ィ!どこ飛ばしとんだあ゛ぁ!?」

くっそ笑ってたらビーチボールの流れ弾を顔面で受けてしまった。いてぇ、けど、柔らかいボールで助かった。
たぶん俺の顔で跳ね返ったボールをキャッチしたんだろう爆豪が、剛速球で投げ返してる。今度は緑谷が顔面で受け止めてて、周りの奴らに心配されてるのが見えた。爆破でブーストかかってるしあれは俺の比じゃないだろうなぁ、痛そう。

「ったくクソ共が」

舌打ちしながらドサッと胡坐をかいた爆豪を横目に、これは俺だから怒ってくれたと思って良いんだろうかーなんて。

「お前は相変わらずすげぇな」
「てめぇはあれぐらい避けやがれ!怪我なんざしやがったら俺がッ……」

素直に褒めればくわっと怒鳴られたけど、途中でグッと言葉を詰まらせた。俺が?

「なに?」
「……っせぇ何でもねぇわ」

小さくそう言ってそっぽを向いてしまった。んー、いつもなら放っておくんだけど、これはなんか詳しく聞きたい。というか、ちょっといじめてやりたいなぁなんて欲がじわっと沸いてきて、手に持ってたペットボトルの先でぐりっと爆豪の頬っぺたを突く。

「あにすんだこら」
「俺が、なんだよ?言ってくれなきゃ今すぐちゅーするから」
「はぁ!?」

吠えた勢いのままベシッと叩き落されたペットボトルを尻目に、じりじりと爆豪に迫る。
此処が外だって事は自覚してるけど、なんだろう、海って開放的な気分にさせる効果があるのかもしれない。
爆豪の膝に手をかけて、ぐっと肩を引く。別に本気でする気はないけど、焦った顔の爆豪を見るの、ちょっと珍しくて、楽しいかも。

「ッ……俺が!俺の身がもたねぇ!!」
「え……」

肩に置いた手を取られて言われた一言にきょとんとしてしまった。俺の身がもたないって……どういう……。

「怪我なんかされてたまるかぼけ……つか無理、てめぇ傷付けんなら俺だ」

真剣な顔で、取られた手を更に引っ張られて、そのままキスされた。咄嗟に離れようとしたけど、頭をがっちり抑えられていて身動きが取れない。
する気無かったのに、何で!とか、抗議しようと開けた口の隙間から舌が差し込まれて、口付けがより深くなる。まじ、ちょおまって、ここ外だって……!

「んっ…ふ、あ……まっばくご…ッ!」
「ハッ、えろ顔」

堪能してゆっくりと離れていく唇から、どっちのだか分からない唾液が糸を引いて落ちた。えろ顔はそっちだ、ヤる時みたいな顔しやがってちくしょう、ぐらっとくるじゃん。

「はぁ……、ん、つうかお前やめろよ外だし……、みんな向こう居んのに」
「先に煽ったのてめぇだろうが、俺はノってやっただけだわ」

ぐい、と俺の濡れた顎を乱暴に拭ってにやりと笑う爆豪がカッコいいとか思ってない。ほんと、まじで、ねぇわ。
胸がぎゅうっと苦しくなる感覚を持て余していたら、近くで砂を踏む音が聞こえた。

「あのさー、俺は知ってっから良いけど、ほどほどにしてくんねぇ……?」

バッと声がした方を見れば、目に毒だわー、って苦笑いしてる切島が居て一気に血の気が引いて死にたくなった。待て今のみ、みられ……!!

「きっきき、きりしま…!!ああああの、みた!?」
「途中から……?」
「途中ってどっからだよ!!?」

恥ずかしさに居たたまれなくなって頭を抱えた。嘘だろまじかよ、いや確かに外で煽ったのは俺だけどそんな見られるとか想定外で、っていうかそもそも俺はするつもりはなかった訳で……!
ガバッと顔を上げて勢いよく立ち上がって、申し訳無さそうな顔をしてる切島を睨む。

「忘れて!!!!」

そう叫んで、そのまま海の家まで猛ダッシュした。くっそ!くっそ!ねぇわまじはっずい!!!!



「えっろいだろあいつ」
「お前マジ加減しねぇと嫌われんぞ……」

走り去った俺を指差しながら、悪役ヅラで言う爆豪に呆れる切島が居た事を俺は知らない……。むしろ記憶なんて無い……。
みんなで遊ぶの楽しかったなー!!って記憶しか無い!!






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