からんと鳴るアイスコーヒー

※相澤×カフェ店員男主シリーズ





じわりとした暑さに、汗が背中を伝う。近くの商店街で貰った団扇をぱたぱたと仰いではいるものの、涼しいというよりも熱風になってしまっている様な気がする。

「しょうたさーん……、あついですー……」
「エアコン、壊れてんだからしょうがねぇだろ。俺も暑いんだから言うな、余計暑くなる」
「そですけどー……。っていうか、そもそも消太さんは此処に居なくても良くないですか?自分の部屋なら快適に過ごせるでしょ……わざわざこんな所で仕事、しなくても……」

そう言った俺をちらりと一瞥したかと思えば、またすぐに手元の資料に視線を戻した。このやり取りは今日一日だけで何度もしたから、もう答える気にならなかったんだろうな。

俺の狭くて暑い部屋を快適にしてくれる筈のエアコンは、現在進行形で故障中だ。
勿論修理は頼んだのだけど、連日の猛暑の影響で業者さんも忙しいらしく、来られるのは明日になる……との事だった。じっと耐えてはいるものの、いつかゆでだこになりそう。
この事は消太さんにも伝えている。のだけど、折角お互いの休みが合ったのだからと自分の家に帰ろうとはしないのだ。
休みだと言うのに持ち帰りの書類を沢山持ってきていて、申し訳ないから涼しい所で仕事して欲しいと思うのに妙に頑固だからか譲ってくれない。とは言え、一緒に居られるのは嬉しいんだから、まぁ俺も現金ではある。

「消太さんのおへやで涼みたい……」
「学校の敷地内だからな、入れてやれない」

また別の資料に目を落としながら返されて、もはや唸るしかない。これも散々やったやり取りだけど、今回は返事をしてくれたみたいだ。
じーわ、じーわと窓の外では蝉が大合唱していて、何も悪い事はしていないのに、その声が暑さを増しているみたいで恨めしくなった。
あ゛ーと声を洩らしながらフローリングの上に転がると、ほんの少しだけひんやりしていて気持ちいい。けど、すぐに自分の体温と同じになってしまってごろりと寝返りを打った。んーつらい。

「こうなったら……」
「あ?」

パッと立ち上がってキッチンへ向かう。
電気ケトルに水を入れてスイッチを押し、大きめのコップを二つと手のひらサイズの瓶を食器棚から取り出した。

「アイスコーヒー作ります」
「……アイスクリームとかじゃないのがお前らしいよ」

だってアイスお腹冷えるじゃないですか、と返しながら瓶を開けて、粉末をコップに入れていく。普段店で出す様な立派なやつじゃなくて、どこにでも売ってる普通の市販品だ。

「消太さんも飲みますか?」
「あぁ……頼む。名前が入れるコーヒーは美味いからな」
「あはは、ただのインスタントですよ?誰が入れても一緒ですって」

元々消太さんの分も入れる気だった癖に、そう問えば嬉しい言葉。そういう些細な言葉が良いなと、胸が暖かくなる。ほんとう、そういうところですよ。
締まりなく笑っているとお湯が沸いた音がして、熱々のそれを注ぎ入れると香ばしい匂いがふわりと広がる。くるりとマドラーでかき混ぜて軽く溶かしてから、氷を入れてまた少しかき混ぜる。カラカラと鳴る氷の音が涼しげで、部屋の暑さは変わらないのに自然と頬が緩んだ。

「はい、どうぞ。少し休憩にしませんか?それ、別に急ぎじゃないんでしょう」
「悪い、あーそうだな……そうしようか」

冷える様にとさらに2、3個足した氷がまたカラン、と音を立てた。
確か昨日買って来たシュークリームが冷蔵庫にあったなと覗けば二つ発見。取り出したそれも一緒にダイニングテーブルに置いた。別に気取った仲じゃないから、袋のままで。

「名前……」
「たまには良いじゃないですか、甘いもの。疲れた時は糖分ですよ」

消太さんが、あんまり甘いものが好きじゃないのは知ってる。苦い顔をしている消太さんの向かい側に、笑いながら腰掛けた。

「いただきます」
「……いただきます」

不本意そうだけれどそれ以上は何も言わずにシュークリームに手をつけてくれたので、にこりと笑う。

「風鈴でも買ってきましょうかねぇ、ちょっとは涼しくなりそうじゃないですか?」
「いや、それより扇風機を買うべきじゃないか?流石に団扇だけ……ってのは原始的すぎるだろう」
「えぇ、でもエアコンが直ったら要らなくないですか?あー早く修理来て……」
「そうだな、ひと段落したら映画でも見に行くか」
「えっいいんですか?やった、行きましょう!」

その一言にはしゃぐ俺はミルクを少し、消太さんはブラックのままで。

まだまだ暑い夏の休日を、甘くて冷たいスイーツと美味しいコーヒーと、そして二人が一緒なら乗り越えられるんじゃないかな、なんて。





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