「美味しかったぁ、やっぱり食事はこうでないといけないね」
「ならよかったッス」
数十分前に出されたステーキを食べ終えて数分後に「晴れると怖いんでもう行くッスよ」と仗助に急かされて外に出てきたのは良いものの、またもや雨が降り出しそうな暗い空になっていた。
「仗助はこれから家に帰る?」
「そのつもりなんだけどよォ…乃亜さんはどうするんスか」
家を出る前、承太郎に私を1人で出歩かせるなよと言われた言葉を気にしているのか私の様子を伺っている。
「折角こんなにいい天気なんだから、ふらふらしていきたい気持ちはあるんだけど…未成年を夜まで付き合わせちゃあいけないもの、今日は大人しくホテルに戻るわ」
「じゃあホテルまで送るぜ」
仗助はそう言うと、くるりと踵を返してホテルの方へと歩いていく。体格差はあるものの私がヒールを履いていること、歩幅、全てを把握して先程からゆっくり歩いてくれている。この男、彼女はいないと言っていたが女の子慣れしているのだなぁ、と場違いなことを考えた。
「送って貴方が家に帰る頃には真っ暗になってしまうでしょ。いいの、タクシー捕まえて帰るから」
それに送るも何も危ないことが一切ない。襲われたにしろ、襲ってくる奴の身を我ながら案じるくらいだ。だとしたら万が一仗助の帰りに集団リンチにあったりする危険性の方が高い。日本はそんなに危ない国ではないのだろうけれど、そちらの方が心配だ。
「なら安心だぜ、ホテルには承太郎さんもいるんスよね」
「えぇ、さすがに今日は帰ってきてると思うから…今日は3日間も放ったらかしにした罰としてワインでも付き合ってもらおうかしら」
承太郎にうんと高い赤ワインを買ってきて貰って昼まで飲み続けるのも悪くない、と考えてから調べごとがあると言っていたので今日それを叶えるのは厳しいかと考えを改める。
「その3日間は俺の為でもあったんで……って、同じ部屋で寝泊まりしてるんスか!?」
異常に驚きを見せる仗助に少しだけ目を丸くする。
「そうだけど…。私何も危ないことしたことがないのに、承太郎たちはみんな心配性だから目のつくところにいてくれってうるさいの」
過保護な彼等に少しうんざりするくらいだが、命短し大事な友人のお願いとなれば聞く以外に選択はない。だけれど本当にたまに、極稀に落ち込んだ時、そんなに私は信頼ならないのか。私は、認められていないのか?と不安になる時がある。考えると少し気分が落ち込んだ。仗助はいいな、承太郎が私を仗助に頼むくらいには信用されている。まだ2人は出会って数日なのに、何年もいる私は1人で出歩くことすら許して貰えない。
「部屋に男女が2人きり…!そんな危ねぇ、」
「仗助はいいね、承太郎に認められていて」
そう少しだけ笑って羨みの目を向ける。仗助は先程から1人で謎にテンパっていたけど、急に真面目な顔になる。
「乃亜さんも認められてるんじゃあねーのかな」
「うーん、承太郎はあまりものを話さないつまんない男だからなぁ…」
絶対に私は承太郎より人間じゃあない点からして既に強いし、
幽波紋もパワーやスピードはないがそれが必要ない程に強い。だと言うのに、過保護な彼等だ。まだあって数日の仗助の方が余程信頼されているのではないか、なんて思ってしまう。
「心配してるだけッスよ。こんな綺麗なお姉さん、1人で歩かせっと変な男がすーぐ寄ってきちゃうから」
「でもそんな男もすぐ殺してしまうのに」
そう呟くと隣を歩いていた仗助が「殺せるって…」と足を止めこちらを見つめていた。
「人間なんて、
幽波紋能力がない人間なら尚更、この私の前では無力なの。鬱陶しければ殺すし、殺しても人間なんて無限に湧いて出てくるじゃあないの」
分厚い雲の向こうで日が落ち始めたのか、道路脇の電柱に明かりが灯り始める。照らされた仗助の顔は真剣な表情を崩さず、ごくりと唾を飲み込んで喉仏が上下した。
「ふふっ、なーんてね!流石にそこまで無闇に殺さないよ」
ニコッと笑えば、仗助は安心したのか崩れ落ちるようにしゃがんで、ホッとため息を吐いた。
「あーもう、ビックリさせないでくださいよ…言ってることと顔がマジでドキドキしちゃったッスよ…」
俯いて下を見ている仗助がどんな顔をしているのか分からないが、反応がいちいち面白くて楽しい。
「や〜お姉さん、それでなくてもこの美しさでジョースケくんのことドキドキさせちゃってたのにごめんね」
場を和ませようと冗談を言えば、立ち上がった仗助がぐいっと距離を縮めてきた。
「いやほんと、今日1日ずっとアンタにドキドキしっぱなしだぜ」
彼は真剣な顔をして言うものだから、深く考えるのをやめて、女の子慣れしてるなぁとぼんやり思った。
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愛の傷は治らない
Endless Dream