知る者は口を開かず

今日も学校帰りに病院へ寄っていた。花京院は安泰らしく、危篤に陥っていたあの時が嘘みてぇに落ち着きを取り戻していた。医者も匙を投げるほど大きな穴をこじ開けられていた腹が、何もなかったかのように修復している。医者から詳しく話を聞くと、運んでいる間に花京院の腹部が光だしたという。服をまくるとまるで細胞の一つ一つが作り出されているかのように腹の傷は修復されていったらしい。#name01##name#という人間がスタンド能力を使って花京院に何かした、そうとしか考えられない。

いや、腹が貫通して生死を彷徨うような重傷を修復したこの異常を、自然現象で片付けられるわけがない。
あと1週間安静にしていれば退院でき、それからすぐに学校へ復帰するとのことだ。おかしいのは一目瞭然だった。奇跡?これは奇跡じゃねえ。誰かの手が加えられているに違いないのだ。その誰かの手が、花京院の言う#name01##name#にあたるのだろうが。
俺らがDIOを対峙している間に、花京院の身に何かがあったのは確かだ。何があったか聞けば『きっと笑われるだろうから』と本人が頑なに拒否するから、追求はできずに終わった。だがどこかで今も、その少女は生きている。そう花京院は言った。
とても信じられねえが、現場で実際に会ったわけではなさそうな口振りだった。走馬灯……いや、夢か?だが体の傷を治癒した説明がつかねえ。

「……よぉ」
「あれ、来たんだ。お母さんと感動の再開をしなくてもいいのかい?」
「必要ねぇな」

そう言うと花京院は全く君は…と呟きため息をついた。最初こそいけ好かない野郎だと思っていたが、それは肉の芽を埋められていた頃の話だ。仲間のために涙を流し、己の信念を確立している。まあ、本人はぶれていると言って認めようとはしないが。死ぬ気でDIOにぶつかっていったんだ、堅い信念があったからこそなせた覚悟だろう。

「……他にもっと詳しく知らねえのか。#name01##name#について」
「残念ながら何も。ああ、そういえば“空の割れ目”について話していた気がするよ、彼女」
「“空の割れ目”?」

花京院の口から“空の割れ目”について語られることはなかった。どうやら内緒話だったらしい。“空の割れ目”ってなんだ、空がガラス細工でできているとでもいわんばかりの比喩。#name01##name#という女の頭を疑う。そう考えると胃が少しばかし重くなったような気がした。

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