人を見た目で判断するな
ーーー!!ウーー、ウーー、
深夜の静かな街並みには合わないパトカーのサイレンが聞こえる。
追いかけっこでもやっているのだろうか。
ただでさえ人通りが無いっていうのに、変に怖がらせないでほしい。
今日も相変わらず理不尽な店長にこき使われて、トイレの掃除は水が詰まって仕事自体も行き詰まるし、店の外のゴミ箱には分別されていない家庭ゴミが大量。
商品陳列の時に引っ掛けてせっかく可愛いネイルが剥がれたし、極め付けは交代のバイトが寝過ごして33分の残業。
多分私、今1番ツいてない女だ。
「...なんか面白い事無いかな、」
えいつ、って蹴った小さな石は、隅に置いてあったプラスチックのゴミに跳ね返って転がった。
もう一回。
もう一回。
この石、家まで連れて帰れるかな。
狭い路地を抜けるあと一歩のところでおおきく振りかぶって蹴れば、ポーンって弧を描いて。
あ、やば。
急いで追いかけようとして。
「っ、」
「うわ、っ」
ドンッ、って大きな衝撃と同時に、今度は私の身体が放り出されて勢いよく尻餅をついた。
音を立てて鞄からスマホやら財布が飛び出す。
液晶が光ってるから壊れてないだろうけれど。
ぶつかったのは、ヒゲ面のおじさん。
スーツを着ているから仕事帰りかな。
こっちもぶつかった拍子に社用バックとメガネが落ちたみたいで、覚束ない足取りで道路まで出ようとしていて。
「あの、これ….」
「っ、あ、ありがとうございます、」
フレームにヒビの入ったメガネを拾って渡せば、苦笑いをしながら鞄も拾って足速に去っていった。
気の弱そうなおじさんだったな。
あの焦り様は、絶対夫婦喧嘩とかしたんだよ。
広がったままの私の荷物をまとめて、お尻の砂を払う。
あ、そういえば、石。
探してもどれがあの石なのかなんて分からなくなっていて、仕方がないとまた足をすすめる。
あーあ、やっぱりツいてない。
道端でぶつかるとか、少女漫画じゃないんだからさぁ。
これで例えば、ちょーイケメンのお兄さんだったとしたら?
物語としては面白くなるのに。
「..帰ろ、」
つまらない1日も、寝たら次の日になるんだから。
また明日、今度こぞ"生きていると思える1日”を。
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