01



わたしの気分は最高潮に落ち込んでいた。
こんなことってないよ。

「これからおまえらを担当する猿飛アスマだ。よろしくな」

挨拶だってぜんぜん入ってこない。
わたしはソッと横目に隣を見ると、アスマ先生のタバコの煙でゴホゴホと一斉に三人が咳き込み始めて思わず肩を揺らしてしまった。
まさか、この三人と一緒の班なんて。

胸の前で抱きしめていた鞄をさらに強く抱きしめた。



今日は運命の班分けの日だった。
教室に入るとみんなザワザワと落ち着きがないようで、そりゃそうかと思う。
これから下忍として任務を一緒にこなしていく仲間になるのだ。
仲がいいことなりたいし、嫌いなことなるなんて以ての外だ。
わたしは悲しいことに、仲良くしてきた子はいないから前者においては問題はない。
しかし、後者に関してはみんなと同じく胸をざわつかせていた。
嫌いな子、は特にいないがわたしにだって苦手な子は居る。

その時、教室の真ん中のほうで一際大きなざわめきが聞こえた。
そちらに目を向けて、うっと息を詰まらせてしまった。

うちはサスケくん。
春野サクラさん。
うずまきナルトくん。
三人の居るところは教室でも一際、という感じ。
いわゆるわたしはああいうクラスの中心、的な人が得意ではなかった。
うちはくんは成績もトップで、なんでもできるし、女の子にもモテるから目立つ。
春野さんも勉強がすごく出来るし、女子の中でもリーダーのような存在だから目立つ。
うずまきくんは勉強や忍術はできなくとも、イタズラ好きで、すごく目立つ。
ああいう目立つ人が得意ではない。
というより、隣に立ちたくない。
出来損ないが際立ってしまうから。

叶うならばあの三人の誰か一人でも居る班には入りたくないものだ。
他にもわたしの中で目立つランキングに入ってる人たちがいる班には入りたくない。
教室の隅、わたしは必死に祈った。

しかし、運命というものは残酷である。

「第十班、山中いの、奈良シカマル、秋道チョウジ、
日之出アカザ」

わたしは思わず机に置いていた鞄に顔をうずめ、絶望した。
もう無理だ、絶対やっていけない。
うちはくん、春野さん、うずまきくんという最悪の班に名前が呼ばれなかったことに大喜びしていたらこれだ。
この三人はわたしの中の目立つランキングに堂々ランクインしている。
だって、三人はこの忍びの里じゃ知らないものはいない名家の子達だ。
親はもちろん、子供達だってわたしなんかに比べたらとても優秀だ。
泣きたい気持ちを抑えて顔を上げると、こちらを見ていた目線とバチリとあってしまう。
奈良くんだった。
咄嗟に顔を俯かせた。
なんだか、睨まれているようだったのだ。



「…い、おい!日之出!」
「は、はい!」
「次、おまえの番」

隣から突然聞こえた大声に肩をビクつかせながら顔を上げると、奈良くんが「自己紹介」とわたしを促した。
いつの間にか自分の番になっていたようで、みんながこちらを見て一気に緊張する。

「え、あ、えっと日之出アカザです…好きな物はあの、たくさん…嫌いな物も、色々…で、将来の夢は」

将来の夢。
そこで思わず言葉を止めてしまった。

『ふふ、きっとアカザは優秀な忍者になるよ!』
『…むりだよ、わたしみんなに できそこない っていわれてるのしってるよ』
『ばかだね、あの人たちは知らないんだよ。醜いアヒルの子が最後は綺麗な白鳥になることをね』
『はくちょうに?!』
『ああ』
『じ、じゃあわたし、はくちょうになる!』
『いいね!母さん、楽しみにしてるわ』

頭に響く優しい声。
わたしを撫でてくれた優しい手のひら。
わたしはあの人のために立派な忍になろうとしたんだ。
でも、あの人は、お母さんは。

「…将来の夢は、今はまだ、決まってない、です」
「なによう!結局なんにもわかんないじゃない!」

山中さんが顔をこちらに突き出しながらそう言った。
そう、なんにもわからない。
わたしは山中さんに苦笑しながら「ごめんなさい」と謝った。

「まあ、何だ!夢なんてもんはこれから見つけていくもんだからな、この班で何か見つけりゃいいさ」

それも無理そうだから困ってるんです。
なんて、先生に言えるはずもなく。
わたしは再び鞄に顔をうずめた。

「今日はこれで解散だ。明日は演習場に集合!いいな?」
「ねえ!お団子食べに行こう!」
「いいわね!」
「めんどくせー…」
「…おまえらなあ」

楽しそうな声と、呆れたような声、それを聞きながらわたしは立ち上がる。
家にはまだ帰りたくないなあ、どこかで暇を潰していかなきゃ。
そんなことを考えながら、一歩ふみだしたときだった。

「ちょっと!」
「えっ!?」

グイと腕を引っ張られてよろつきながら両足で踏ん張った。
腕を掴んでいるのは山中さんで、不思議そうな顔をしている。

「な、なに?」
「なに?じゃないわよ!あなたも来るの!」
「え?どこに?」
「どこに?って聞いてなかったの?お団子!食べに行こうって話してたじゃない」

そう言われてわたしは驚いた。
いや、確かにその話は聞いていたけどわたしもそこにカウントされていたのか。
三人で、という前提で聞いていた。

「せっかく同じ班になったんだもの、仲良くしましょうよ」
「仲良く…」

この、三人と?
もう、うんと仲のいい三人と?
考えれば考えるだけ無理だと思えた。
だって三人と一緒に仲良くお団子を食べてるわたしなんて想像できなかったのだ。

「…ご、ごめんなさい、き、今日は用事があるの」

わたしがそう言うと山中さんは少し考えるように唸ったけど「じゃあ仕方ないわね、また今度行きましょう」と手を離してくれた。
離れた手に少し寂しさを感じながらもわたしはみんなに頭を下げて、そこから逃げるように立ち去った。



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