03



窓から差し込む太陽で目を覚ました。
いつもはなんてことない目覚めもなんだか今日は特別な気がした。

「…よし!」

ひとつ気合を入れてわたしは布団から飛び起きた。
今日は、第十班最初の活動の日だ。



指定された時間より早めに演習場に着くとまだ誰も居なくて少しソワソワしてしまう。
これだとわたしがみんなと挨拶を交わすのは必然だ。
アカデミーの時もそうだった。
あまり人と関わりたくなかったわたしは教室には人が増えてきたら入るようにしていた。
今自分が迎える立場にある、と分かると急に帰りたくなったが頭を振って考えを捨てる。
昨日アスマ先生に話してもらったんだ、わたしも努力しなきゃ。
胸に抱いてあるカバンをぎゅうと強く抱きしめた。

「あれー、日之出さん早いのね」

そう言って現れたのは山中さん、だけではなくその後ろに秋道くんと奈良くんも居て早々に心を折られたように思えた。
やっぱり三人で仲いいんだ。
俯きそうになる顔に気付いてもう一度頭を振る。
言いたいことがあれば言う!

「おっ、おはよう!!」

意気込みすぎた挨拶は思いのほか、大きな声が出てしまって山中さんたちはすごく驚いていた。
かくいうわたしもびっくりだ。
わたしこんな大きい声でたんだ。
しばらく沈黙が続くと、山中さんが噴き出した。

「アハハ!何ィ〜?そんな大きい声出さなくたって聞こえるわよ!おはよ!」
「おはよう〜」
「…オス」

三人がわたしに近寄りながら挨拶を返してくれた。
そのことにわたしはたまらなくむず痒くて、胸のあたりがあったかくなった。
挨拶が返ってくる、なんてこれもわたしには久しい。
こんなにも嬉しいことだったっけ?
にやける顔を隠すように抱いていたカバンに顔をうずめた。

しばらくするとアスマ先生が現れて、三人と一緒に居るわたしと目が合った。
小さく笑うと先生は少し驚いた顔をしたあと、わたしと同じように笑い返してくれた。
三人はわたしと先生の謎のやり取りに首を傾げていた、なんて浮き立つわたしには知る由もない。




「よーし、今日は下忍認定試験を行う」
「「えー?!」」

アスマ先生の言葉に山中さんと秋道くんが大きな声を上げた。
声こそ出さなかったものの、わたしも、奈良くんでさえ驚いた顔をしている。
だって、わたしたちもう下忍じゃないの?

「先生!わたしたちもう下忍でしょォ!?」
「そうだよ、卒業試験はもうアカデミーでやってきたよ」

二人が声を荒げてそう言うのに対して、先生は至って落ち着いていた。

「お前ら卒業試験何やった?」
「え?何って…影分身の術」
「それと?」
「それと?それしかやってないわ」
「忍に必要なのは影分身の術だけだと思うか?」

笑いながら言った先生にみんなが口を閉じた。
先生は遠回しな物言いだったが、それだけでも充分わかった。
『忍になれるのに影分身だけで済むと思うなよ』
暗にそう言いたいのだろう。
まあ、わたしもあの卒業試験は呆気ないとは思ったけど卒業できたと喜んでからのこの仕打ちとは。

「というわけで、下忍認定試験はこれだ」

先生がゴソゴソと懐を探ると、チリリン、と小さな鈴の音が聞こえた。
先生の手に持たれているのは三つの鈴だった。

「鈴取り。今からお前らは全力で俺からこの鈴を一人一つずつ奪えばそれでいい。簡単だろ?」

そう言いながらその他のルールも喋って行く先生にわたしは首を傾げた。
そんなに簡単でいいのかな?
先生相手に簡単に取れるとは思ってないけど、運良くとれちゃったりするんじゃないだろうか。
それこそ、呆気ないような。
チリンチリン、と鳴っている先生の手元の鈴を見て気がついた。
あれ?鈴が

「おい、待てよ」

わたしが思ったのと同時に隣で奈良くんが声を上げた。
奈良くんは先生を睨むように見ていて、ちょっと怖い。

「鈴、三つしかねーぞ」

奈良くんが指摘したことにわたしも頷いた。
そう、先生の手元には三つしか鈴がないのだ。
一人一つずつ、さっき先生はそう言った。
わたしたちは四人だ。
一つ、鈴が足りない。
先生は奈良くんの指摘に「三つしかねえな」と焦る様子もなく淡々と答えた。

「ちなみに取れなかった者は不合格。アカデミーに戻ってもらう」
「ま、待ってよ!それって」
「そうだ、誰か一人がアカデミーに戻らなきゃいけねえってことだな」

そう言うと先生は静かにタバコをふかした。
誰か一人がアカデミーに?
そんな理不尽なことがあるのだろうか。
黙り込んでしまったわたしたちに先生は「始めんぞ」と声をかけ、わたしたちは釈然としないまま、スタートを待ったのだった。


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