焼酎の入ったグラスを一気に煽る。
ぐい、という効果音が似合うくらい思い切り。
いつもよりかなり度が強いであろうアルコールが喉を焼いた。
ごん、と音を立ててグラスを机に置くと目の前でそんなわたしを見ていた親友が一言。
「ねえあんた飲み過ぎ」
「うるさーい、今日は飲むってきめたのー」
「あー!もー…ったく、もうでろんでろんじゃないの」
呆れた表情でこちらを見てくる親友、春野サクラになんか熱くなってグラスを振りかざすようにして持ち上げたら案の定、中身が胸にかかって、サクラがおしぼりで拭いてくれた。
ごめんだけど今日は飲むよ、わたし、だって、
「ユウナの失恋慰め会だもんねー」
わたしの胸元を拭くサクラの横で、これまた親友の山中いのが笑って言った。
いのの言葉にさっき止まったはずのわたしの涙はまた目元に浮かび上がってきて。
「うわあああん」
「わ、ちょ、」
胸元を拭いているサクラをぎゅうと抱き締めてうわんうわん泣き喚いた。
それをみたいのがゲラゲラと笑い始めて、また涙は溢れるばかりだ。
ついさっき、わたし森乃ユウナは失恋した。
『ごめん、そうゆうことだから』
それが彼の、もといクソ野郎の最後の言葉だった。
わたしはいつも通り業務を終えて、帰路についていた。
ふと見えた横顔、交際していた彼だった。
急いで駆け寄ったがその足はすぐに止まった。
隣に見知らぬ女性の姿。
どくどくと心臓がものすごいスピードで動いていた。
二人の距離はやけに近い。
うそだろ。
そう思ったときには、彼のほうから女性の腰に手を添えて甘い甘い口づけ。
二人は互いに顔を見合わせ笑って。
女性の視線がわたしの視線とかち合った。
気まずい顔をした女性に気付いた彼が、わたしへと顔を向けた。
やっべ。
そんなアフレコがぴったりの表情をして、彼はわたしに言った。
『ごめん、そうゆうことだから』
そうゆうことって?なに?
彼は女性の腰に手を添え、仲睦まじく歩いていった。
何も言えないわたしを置いて。
しばらくつっ立って状況整理をして自分が捨てられたのだと、自分はいらなくなったのだと、理解した。
理解した直後、涙がぼろぼろ溢れてきて、わたしは直立不動のまま嗚咽すら洩らさずただ涙を流しているという、奇妙な図で泣いていた。
そこを、任務帰りのこの二人の親友に保護され、事情を話せば、すぐさま近場の居酒屋へ傾れ込み、愚痴大会が始まった。
最初こそわたしを慰めてくれた二人だったが、わたしの悪酔いにサクラは呆れ、いのは自分が酒に呑まれ、わたしの失恋をネタにし出すし、わたしはこれでもつらいんだぞ。
「飲んで!あんな男忘れてやる」
「だからって飲み過ぎよ」
「いーぞ!ユウナ!飲め飲めー」
「いのも煽んないでよ!つかあんたも飲み過ぎ!」
「うるさいわねー、にしても、ユウナが振られるとか驚いたあ!里でも有名なカップルだったし」
「…まあそれはわたしも思ったけど」
傷をえぐるな親友たちよ、
またぐすぐすと鼻をすすりながら酒を煽った。
「あれ!シカマルじゃない!」
サクラが発した名前に、後ろを振り向けばシカマルがちょうど店に入ってきたところだった。
「なんだうるせーメンツだな…って…なんかあったのかよ」
相変わらずめんどくさそうに近寄ってきたシカマルはわたしの悲惨な顔に気付いたのであろう、驚いた表情をした。
「き、聞くんじゃない…」
「今ねえ、ユウナの失恋慰め会中なのよー」
「…は?」
「もー!いの言うな!」
あっさりと言ったいのはシカマルに事細かにいきさつを話し始めてしまい、わたしはもう顔を覆って羞恥と悲しみに耐えた。
「ふーん、で、泣いてんの?」
いつの間にかシカマルはわたしたちと相席していて、手にはビールジョッキと机にあったわたしたちの残り物をつついていた。
「…」
「ユウナったらあの人のこと大好きだったからねー!会えばいっつも彼がー彼がーってさー」
「う…」
「あーもーいのぶた黙りなさい…またユウナ泣くじゃない」
「もう泣かないし!飲むし!すいませーん!焼酎瓶くださーい!」
「はあ!?あんたもう何本め」
「いいわよユウナー!」
「…なあこいつら酒弱いよな」
「うるっせえシカマル!強いから!アホ!」
そこからの記憶はもう皆無だ。
ただ、泣いて、叫んで、仕舞には楽しくなって、笑って、でも最終的にたくさん泣いたのだけは覚えている。
んだけど、これは一体どういうことだ。
なみだでぬれたよる
「え…?」
朝日が眩しくて目を醒ましたら隣にシカマルが寝ていた、だなんて。
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