奇野 もずめ 04



退院した翌日、やっぱり、旅に出た。

“元”の体質を取り戻した上に、若い身体を手に入れたも同然なのに、何故か?だって?


そんなもん、決まってる。

欲求が勝ってしまったのだ。

もっともっともっと、様々な“病毒”が欲しいと…。


理由?

無いね。

強いて言えば、私が“病毒遣い”だから…かな?


そうして、私は意気揚々と、裏社会へと、足を踏み入れた。










―――― ★ ――――











しかし、子供の姿だからなのか、ナメられた。

闇ルートの人達に因って、今、私は人攫いの手に落ちてしまった。


迂闊(ウカツ)だった。

自分が今、ちょっとした有名人だと言う事を、スッポリと頭から追い出してしまって居た。





(人識)『相変わらず、鶏並の莫迦(バカ)頭だな。』





【戯言遣い】を、仲介に、触媒にして、思わず再会した“腐れ縁”だった筈の“彼”。

【人喰い(マンイーター)】に因って、中学生活が壊され、表社会から追放され、3人バラバラに成り、もう今生では、会う事が無いだろうと思って居た、諦めて居た時の有り得ない、“縁”の取り直し。

“零崎 人識(ゼロザキ ヒトシキ)”は、呆然とする私を見ながら、『傑作だぜ』と、お決まりの文句を呟きながら、『かははっ』と、諧謔(カイギャク)的に笑った姿は、相変わらずで、少なからず、安堵したのを覚えて居る。





(##NAME1##)「(…って、前世の干渉に浸ってる場合じゃ無いんだけど(苦笑))」





さて、現実に戻ろうか。

そうして、##NAME1##は視線を動かす。


人攫いは、6人。

人質は、私含め、2人。

もう1人の人質も、子供だ。

私同様、手足を縄で縛られ、口をテープで塞がれて居る。


“此の身体”と比べて、多分、4〜5歳差で、年上の男の子だ。

骨と皮しかないんじゃないかと、思える程の細身で、頭髪がグレー。

其の少年は、死んで居るのでは無いかと思う程、一切、微動だにしない。


意識は…多分、あるだろう。

寝て居る様子は、全く見受けられ無いから。





(##NAME1##)「(相当な場数を踏んで居るのか、其れとも、相当、肝が据わって居るのか、はたまた、“ヒーロー”が来てくれると確信してるのか…)」





少年の心情等、分からない。

でも、困った現状だ、此れは。

人質が、自分だけなら、遠慮なく、躊躇無く、“奇野”としての力を存分に発揮し、人攫い共に鉄槌を下し、自力で脱出出来ただろう。


だが、此の少年が居るとなれば、話は別だ。


【呪い名】は、たった1人居るだけも、敵味方合わせて、総数以上の損害を与え、しかもたった1つの利益も生み出さないとまで言われる、実にえげつない集団の集まりだ。





(##NAME1##)「(自分だって、例外では無い。…が、私は“特別製”だ。 )」





其れに…、前世からの誓いである、殺さずの誓い…『不殺』は、守りたい。

其れが、“奇野”でありながらも、物心付く前から、自分の中で確かにあった信念だ。


≪戦闘不能≫にした事は数多なれど、≪殺生≫を働いた事は1度も無い。

“ソレ”に誇りを持つのが、自分自身、“奇野 ##NAME1##”と言う人物を作り上げて居るのだ。





(##NAME1##)「(其の矜持を捨てる気は、更々、無い!だが、此処で良い様にされるつもりも無い!)」





弱い、“病毒”から行くか…。

まずは、無難に遅効性の筋弛緩薬から、充満させる。


少年には悪いが、自由を、少々奪わせて貰おう。

暫く経って、人攫い達が、異変に気付き、狼狽えながら、床に伏せて行く。

そして、其れを見届けた後、ウイルスに因って、手足に熱を集め、縄を溶かし、焼き切る。


自由に成った手足で、口に貼られて居るテープをビリリッと取る。

そして、人攫いの所まで歩いて行き、鉄槌を下すべく、歩み寄る。


まだ、自分が、“病毒遣い”だとバレると都合が悪い。

残念だが、四肢、及び五感を壊させて貰おうと、実行に移った。



全ては、口封じの為に…。



毒に因って、四肢を腐敗させ、病気に因って、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を破壊させる。

そして、止めに、声帯を潰す。


此れが、私の1番、えげつない≪戦闘不能≫の行為。

まさに、生き地獄を味わうとは、此の事を言うのだろう。


彼等は、もう1人で、何も出来やしない。

いや、其れ所か、“人間”として真っ当な生活は出来ないだろう。


まぁ、其れは自業自得と言う事にして、良しとする。

自己完結をして、##NAME1##は少年の拘束を解いて行く。

序でに、先程、部屋中に、いや、建物を覆う筋弛緩薬も、少年の体から、取り除いて行く。


動けるかと、声を掛けようとした時、片方の頬に突然、痛みが走った。

少年に頬を殴られたと気付いたのは、じんじんと押し寄せて来る熱を、自覚した時だった。

少年は、此方を、並々ならぬ憎悪を秘めた、研ぎ澄まされた刃の様な鋭い視線で、此方を睨み付けて来る。


何故、少年に、殴られ、睨み付けられるのか、分からないし、サッパリ検討も付かない。

普通なら、助けた相手に、感謝を述べたり、私の“病毒”に、恐れ慄(オノノ)くかの、どちらかではないだろうか?





(?)「クソ餓鬼が。俺と先生の邪魔しやがって、許せねぇ。ぶっ壊してやる!!」










And that's all
(それでおしまい…?)

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解せぬ花