奇野 もずめ 06



オール・フォー・ワンは、驚いて居た。

たった今、半壊させた建物の中に、8人の人間が居るのを知って居た。

“個性”の1つを使って、中の現状把握をし、小柄な2人の居る方とは正反対の、何故か床に伏して居る様な大人らしき6人の方へと向かって、もう1つ“個性”を発動させたのだ。


そうして、半壊させた建物に踏み込んで、飛び込んで来た光景に、目を見開いた。

少女は横っ面(ツラ)が、殴られたかの様に、赤く腫れあがって居り、愛弟子の弔は、頭突きでもされたのだろうか?額が赤く腫れあがって居た。

今は、動きを止め、呆然と此方を見て居るが、先程まで、少年と少女は、殴る、蹴る、ぶつかる、倒れると、壮絶なる大喧嘩(オオゲンカ)を繰り広げて居たのだ。



弔は、気に入らない物は壊したい、思い通りに成らないと、癇癪(カンシャク)を起こす。





(AFO)「(まぁ、其れは、弔の特性なんだけど…。)」





彼の五指に触れられれば、其の物は、崩壊を起こす。

なのに、目の前の少女は、恐らく、弔が殴ったであろう頬以外、大した怪我は見受けられない。



崩壊させられた箇所が、何処にも無い。



此れは、異常な事だった。

非常に、珍しいレアな事実だ。


少女の、“個性”だろうか?

“個性”を消す抹消タイプか?

其れとも“個性”を無効化にするタイプ?

もし、そうだとしたら、手に入れて置きたい。


其処まで、思考を巡らせて居ると、其の思考をさえ出る様に愛弟子が、自分を呼んだ。





(弔)「先生!!」





少女から離れ、自分の元に駆けて来る少年。

どうやら、“生き残って居る”3人の中で、最初に、我に返ったのは、弔だったらしい。





(AFO)「なんだい?弔。」





タックルする様に、抱き付いて来る弔。

しがみ付いて来る手は、もう、早くも癖に成って居るのだろう、指の1、2本を離して…。

其れでも、しっかりと握り締めて来る弔に、オール・フォー・ワンは、あくまでも、ゆったりとした穏やかな口調で、呼び掛けに応じる。





(弔)「あの餓鬼が、俺達の邪魔をしたんだ!」





片手を、オール・フォー・ワンの服から離し、少女を指差す。

指を指された少女は、眉根(マユネ)を、きつく寄せて、起き上がり、此方を鋭く見つめて居る。


其の立ち振る舞いには、迎撃態勢を取って居る様にも見える。

『何時(イツ)でも、何処からでも、掛かって来いやぁ!』と言う、反抗期の様な、チンピラの様な、雰囲気だ。





(AFO)「(いや、其れにしては獰猛過ぎる。まるで…野生の獣の様だ。)」





何者にも懐かない、群れない、染まらない、孤高の野獣の様だと思った。

素晴らしい!!と、率直素直に、オール・フォー・ワンは感動した。


恐らく、年齢4、5歳位であろう、少女。

本来ならば、無知で脆弱で純真無垢であろう時期の筈の少女。


なのに、目の前の少女からは“表社会”で生きて来た様な雰囲気は、微塵(ミジン)たりとも感じ無い。

其れ所か、我々の様な、そう、“裏社会”の様な“暴力の世界”こそを、生きて居る者達と、同様の瞳をして居た。


いや、しかし、微妙に異なる瞳だった。

まるで、相容れない、光と闇の双方を、煮込み混ぜて、潜ませて居る様な双眸(ソウボウ)を、爛々(ランラン)と輝かせて居た。





(AFO)「君、名前は?」





“個性”を奪い取り、用済みにするだけでは、惜しいと、そう思った。

オール・フォー・ワンは、少女から、“利用価値”を、見出そうとして居た。










And that's all
(それでおしまい…?)

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解せぬ花