夏目友人帳×Dr. STONE2




「やっぱり、私は、役に立たないお荷物の厄介者どころか、周囲に薄気味悪い不安や恐怖や混乱を与えてしまう上、きっと余計なトラブルを招いて、巻き込んでしまう疫病神みたいだ。」


「雷雨のあの日、傍に居て、手を握って、頭を撫でてくれて、ありがとう。上着を貸してくれて、ありがとう。忙しくて大変なのに、私とお話をしてくれて、ありがとう。獅子王、私ね、嬉しかったんだ。楽しかったんだ。嬉しかったんだよ。」


「頼み込んだら、新しく住める所を探す手伝いを、させてくれることになったんだ。だから、もう此処には来ない。」


「さよなら」


「後、その、これ、2人が気に入らなかったら、着けなくていいし、捨ててもいいから!」



最後、なかば強引に押し付けられた袋から出てきたのは、少しいびつなしずくの形をした透明なその中には、6色のカラフルな花たちが散りばめられていて、真ん中では可憐な片側1枚の桜貝がとじ込められている美しい作品。その作品が、2つ。

真ん中の桜貝は、両方とも片側1枚だが、大きさや形から見て、おそらく元は1つの貝だったのだろう。桜貝は二枚貝の1種で、2枚で1つだ。

2枚繋がった桜貝はレアだ。桜貝拾いでは、大体は片側1枚のみ、穴や欠けがあるものも多い。そんな中、綺麗な状態で2枚がくっついている合わせ貝を拾えたら、本当にラッキーなこと。

そんな貝をわざわざ1枚ずつに分けて、2つに作られたハンドメイド品は、ペアルックを思わせる。そして、作品の大きさと、紐を通せるくらいの小さな穴が1箇所ある事から、ネックレスやブレスレットに出来るアクセサリーだと分かる。

恋人同士や友人同士や家族同士でお揃いで着けるペアアクセサリー。しずくをモチーフにした中に詰め込まれた綺麗な花たちと桜貝は、まるでハッピーエンドを迎えた人魚姫の嬉し泣きの美しい涙を連想させる。

「家族」「人魚姫」「貝殻」「首飾り」それらのキーワードが次々と頭に浮かび、そのペアアクセサリーに込められた意味が瞬時に理解出来る…出来てしまった。



“よかったら、妹さんとお揃いで着けてね”



ある兄妹の話をした。千空に話した時のように。その時よりも、少しだけ、話を付け加えて。

彼女は、気付いていた。その話が、司の事である事を。なら当然、分かっただろうに…妹の結末を。

そして、このストーンワールドでは、2人の意思うんぬん前に、もう会うことは…その姿を見ることすら叶わない事も理解した筈だ。

なのに…先程のセリフと、この気合の入りまくったハンドメイド品は、まるで、2人がまた会って、このペアアクセサリーを手に取って、見て、どうしようかと話し合うことが出来る日が来るのは、確定事項です!と言わんばかりだ。

このストーンワールドではなく旧世界で会っていたのならば…もしくは、彼女の友人を部下が傷付けていなければ…千空と同様、友達になれたかもしれない。

石化前の世界の「霊長類最強の高校生」の獅子王司としてでも、ストーンワールドの「司帝国」の獅子王司としてでもなく、ただの1人の人間の獅子王司として居られる摩耶の傍は心地良かった。

感情表現や言葉を伝えることは不得手で口下手で、突飛な言動や奇妙な言動も時々するけれど、仲間でも何でもない司を想って、こんなに丹精込めたハンドメイドを贈ってしまうくらい優しい心の持ち主。



『さよなら』



もう2度と会わない。今後一切、関わらない。

深い悲しみや苦しみや痛みに暮れた、悲痛な決意表明。

でも、その中に、司への怒りや憎しみや恨みは、微塵たりとも感じない。

その証拠に、先程の理由を述べてるセリフには、司を責めたりする表現は、一切なかった。あったのは強い自責の念と司への感謝だった。

いくら司の部下の所業を知る前からとはいえ、作った物を、見方によっては、摩耶を傷付けた司にプレゼントして来た。渡す事をやめる事だって出来たのに、それを選ばなかった。

それが分かった時、千空を手に掛けた時よりも、ずっと、心が痛くなった。

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解せぬ花