「あれ、谷原くん?」
「あ、谷原だ。」

聞き馴染みのある声に振り向けば予想通り居たのは宮村と進藤。

「お、おう…。」

いつもならそのまま何処かに遊びに行くが今日ばかりは会いたくなかった。それも……。

「マキのお友達?」
「えっ!?あっ、えっ!?谷原くん彼女居たの……!?」
「はぁ!?」
「!そうなの!マキがいつもお世話になってます〜!」
「嘘つくなよ!?」
「あれ名前さんじゃ〜ん!」
「あ、進藤くんだ。久しぶり〜。」
「宮村、この人谷原の姉ちゃん。」
「えぇっ!?」

実の姉と一緒な今日この日に。



「改めて、マキの姉の名前です。宮村くんとは初めましてだね。」
「宮村です。えっと、さっきの彼女云々は……え、もしかして……?」
「ねえよ!!姉貴の悪ふざけだから!!信じるなよそんな事!!」
「マキうるさいよ。」
「お前のせいだよ!!」

谷原家の血を継ぐ姉は俺や兄と同じような鮮やかな青色で、俺と似たような猫目は俺よりも少し大きい。こんなにもそっくりだが唯一似なくて兄と共に喜んだのは姉が俺たち程短気ではない事だ。神様ありがとう。

「今日はどっか行ってたんですか?」
「買い物にね〜。服欲しくてマキに付き合って貰ってたの。」
「仲良いっすねー!」
「まあね。」
「朝一で叩き起こして来たの誰だよ。」
「ごめんって、ほらイチゴあげるから。ね?」

そう言って姉ちゃんは俺に自分の食っていたケーキの上にあるイチゴを刺して俺に与えようとしてくる。ショートケーキの主役を良いのかと思う気持ちと、そんなもんで誤魔化すのかと呆れる気持ちがせめぎ合う。けれどまあ結局この姉には誤魔化されてしまうのだけど。酸っぱいなこのイチゴ。

「仲良いね。」

さっきの進藤と同じ様な事を繰り返す宮村は微笑ましそうに俺達を見て……。

「……………死にてえ。」
「え、何で?」
「谷原照れちゃってんですよ!」
「そうなのマキ。」
「仲良いのは良い事だよ〜。」
「うっせえわ!」

恥ずかしいが俺にはニコニコとしながら頭を撫でてくる姉の手は払えないのだ。