報告した件

苗字さんに告白してまさかまさかの付き合うことになって、そのまま放課後だったのもあって一緒に帰る事になった。お互い今までろくに話した事が無かったから校門に向かってるだけでも無言が長く続く。そんな時間でも今の俺には至福のひと時だ。

「…あれ、みんなこんな所で何してるの?」

門の前に居たのは山本、獄寺くん、そしてリボーン。

「小僧が振られたツナを慰めてやれって……あれ、苗字?」
「えっとそのこと、なんだけど……。」

俺もみんなも振られると思っていたから誰にも彼女がここにいる事は予想出来るはずがない。俺だってそのうちの一人だ。

「ま、まさかテメエ10代目の愛の告白お断りしたわけじゃねえだろうなぁ!」
「山本君も獄寺君もどうしたのこんなところで。」
「質問に答えろよ!大体何で俺の名前知ってんだおめえ!」
「二人とも有名だから。それに断ってないよ。」

「「え…?」」

「その、俺達つ、つ、つ、付き合う事になり、ました…。」

「「えぇぇぇぇええ!?」」

そりゃそうだよな。驚くよな。俺も驚いた。それほど今の現状は誰にも想像していない事だった。実際どうしても、なんで俺なんか、というのは残る。

「ちゃおっす。」
「こんにちは、沢田君の弟くん?」
「違えぞ、俺はツナの家庭教師だ。」
「そうなの?」
「えぇ〜っと…。」

いつもの事ながらリボーンの説明には困る。嘘をつきたくないけれど家庭教師とか普通の人からしたら意味が分からないだろうし、兄弟と嘘をつくのも無茶がある。

「小さいのに凄いね。」

俺がなんて言うか悩んでる間にそう言って苗字さんはリボーンを抱き抱えた。信じたのか信じてないのかは定かではないが特に何かを疑っている風には感じない。リボーンもリボーンで珍しく大人しい。何だこの光景。本当に、夢じゃ無いのだろうか。

「よし、んじゃ俺らは帰るか!」
「ぁあ!?何言って、俺は10代目を……!」
「いーから、いーから!」
「や、山本!獄寺くん!」

リボーンを肩に乗せて山本は獄寺くんを無理矢理連れて行ってしまった。確かに苗字さんと一緒に帰るつもりだったけれど、さっきまでいつもの皆んなと居たから急に2人になるとどうすれば良いのか分からなくなる。

「じゃ、じゃあ、行こうか…。」
「うん。」

歩き出すと同時に、手に慣れない温もりがやってくる。さっき握られた物と感触はよく似ていた。

「えっえぇっ!?苗字さん!?」
「さっきも繋いだけど…嫌だった?」
「そっそういう訳じゃ無いけど、ホラ!俺、手汗とか酷いし!」
「それ、さっきも聞いたよ。ね、帰ろう?」

繋がれた手を振り解けるはずもなく、望んだ笑顔の近さに俺は彼女を直視出来なかった。俺と居てそんな幸せそうな顔をしてくれるなんて思ってもみなかったんだ。

「チッ、ツナのヤロー女にリードされやがって。」
「まぁまぁ、落ち着けよ小僧。ツナ達にはツナ達のペースがあるんだって。」
「じゅ、10代目…!認めたくは有りませんが頑張って下さい……!」

そんな会話が俺たちの後ろで繰り広げられてたなんて、有頂天な俺が気づくはずもなかった。