おはようから始めよう
    HBD雲雀2019

    「え、誕生日、ですか。」
    「あぁ。俺達みんなで祝うのは嫌がられるから代表でお願いしたい。」
    「そもそも俺風紀委員じゃない…。」
    「俺達より苗字に祝ってもらえる方が委員長もきっと喜んでくださる。明日もきっと学校に来ていると思うから、頼んだぞ。」
    「え、えぇ〜……。」



    「そもそも俺一人で学校行けないんだけど…。」

    雲雀さんの誕生日を祝ってくれと草壁さんに頼まれた俺は学校に向かうべく午前中に家を出た、が何故か河川敷で夕日を眺めていた。

    そもそも俺が祝って雲雀さんが喜んでくれると思えないのだけれど。断る間も無く頼まれてしまったからにはやるしかない。と言っても何かあげるにも俺は雲雀さんの好みなんて分からないし、下手な物をあげて怒りを買うのも御免だ。精々一言祝いの言葉でしかお祝いできない。それでさえも彼の反感を買うのではとビビってしまう。

    まあ何にしろあまり遅い時間だと風紀が乱れると怒られてしまうかもしれないし、何より俺一人ですんなりと学校に辿り着けるとは思えない。草壁さんに頼まれた通りだが誰かと一緒にというのは許されない。そうなると一人で行くしかなくて今に至る。草壁さん、頼む人間違えてませんか。

    「はぁ……どうしよ。」

    この河川敷がどこかも分からないし何なら今日何回か見たこともある気がしてくる。もう日が沈み始めているし雲雀さんも学校から帰ってしまったかもしれない。明日草壁さん達に何て謝ればいいんだろう。きっとみんな雲雀さんのお祝いをしたかったはずなのに。きっと雲雀さんの気持ちを尊重して俺一人に託してくれたと言うのに。

    それに、ツナやみんなの言う通り怖い人というのも分かるけどそれだけじゃ無いと何回か手伝っている内に気付いた。俺だってお世話になっているし大事な先輩だ。俺にもお祝いしたい気持ちがある。

    それなのに現実は上手くいかない。こんな日ぐらい偶然でいいからちゃんと目的地に辿り着かせて欲しい。

    「み〜どり、たな〜びくぅなぁみぃもぉりぃの〜…」

    校歌はとっくに覚えたのにいつまでも道は覚えられなくて情け無い。緑たなびく並盛はいつまでも見えてこない。雲雀さんの居る並盛は見えてこない。ああダサいな、目の前が水分で歪んで見える。

    「ダーイナーク、ショーナクーナーミガイイー」
    「へ?…ヒバードだ!?どうしたのこんな所で…。」

    泣きそうで消え入りそうな俺の声に続いたのは最近ようやく聴き馴染んできたヒバードの歌声だった。

    「どうしたの?一人?」
    「一羽と一人。」
    「っわ!?」
    「それとも君は鳥を一人と数えるのかい。」

    ヒバードと戯れていたら背後から急に声が掛かり肩が跳ねる。それと同時に目の前で羽ばたいていたヒバードは僕の頭上を越えていく。つい釣られて目で追うとヒバードは背後に立っていた人の頭に着地していた。

    「…雲雀さん。」
    「何その情けない顔。」

    夕焼けに照らされている雲雀さんは呆れたように、可笑しそうに薄く笑っていて綺麗だ。それにひきかえ俺は学校に辿り着けない不安や情け無さや何やらで雲雀さんの言う通りの顔をしているんだろう。雲雀さんに会えたお陰でそれはより一層酷くなってそうだ。

    「何でここに…。」
    「草壁から連絡がきてね。君が学校に来るって言ってたんだけど、いつまで経っても来ないから。」
    「昼前には着くつもりだったんです。」
    「もう夕方だけど。この子も君の名前を呼んでうるさくてね。」
    「わざわざ探してくれたんですか。」
    「用があるんでしょ。聞いてあげる。けど下らない事だったらタダじゃおかないよ。」

    こういう所だこの人は。俺なんかの用事の為にわざわざここまで来てくれた。きっとみんなが思ってるより優しい人だ、分かりづらいだけで。

    「おめでとうございます。」
    「……?」
    「お誕生日、ですよね。草壁さんから聞きました。」

    いつもより少しだけ目を見開いてるのは驚いているのだろうか。あまり見ない顔だ。

    「あぁ、そう言えば今日か。」
    「好きな物とか分からなかったんでお祝いの言葉だけですけど…。でも雲雀さん居なかったらきっとずっと迷ってたので、雲雀さんが居て良かった。お誕生日、おめでとうございます。」
    「誕生日なんて、下らないね。」
    「エッ。」
    「でも、案外悪くない。」

    ほら、優しい人だ。優しくてずるい人だ。

    俺なんかのお祝いで少しでも喜んでくれるんですか。俺でいいんですか。その笑みは俺だからですか。夕日の光がキラキラと反射して眩しいです雲雀さん。眩しくて、目が開けてられませんよ。

    「来年は迷わないで来なよ。」

    ああ本当にずるい人だ。そんなの来年も祝うしかなくなる。

    「じゃあ、来年までに雲雀さんの好きなもの教えてくださいね。」

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