からの幸福感

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(朝…?)
太陽の光がまぶしい。今日は晴れか。梅雨の晴れ間ほどうれしいものはない。今日はひさしぶりに布団を外に干せるぞ。
「うっ…」
まだ寝ていたいが洗濯機を回そう。そう起き上がろうとするが腰に何か重い物が置いてあって身動きがとれない。それより私いつベッドに移動したんだろう。昨日はソファーで眠ってしまったはずなのに。
「起きたか。」
「ほ、ほぇ…?」
自分の頭の上から声が聞こえた。ぱっと見上げると昨日待ち焦がれていた彼が私を見つめている。
「う、うぎゃあ!」
「おい人をバケモノ扱いするな」
「だっ、え、な、」
だって、えっと、なんで?質問したいけど、彼に頬をつままれてうまく言葉にできない。小田和正の歌が頭に流れる。おっと話がそれたねごめん。
「いひゃい〜」
離してとお願いしようとしたら彼にぎゅっと抱き寄せられた。
「れ、零くん…?」
心臓の鼓動が急速にはやくなる。恥ずかしいけど自分も彼をもっと近くに感じたくて彼の胸に顔をうずめた。あ、零くんの鼓動も速いや。
「名前…ただいま」
彼なりに昨日のことを気にしているのだろう。彼らしい謝罪の表現だ。
「ふふ、おかえり。」
「…笑うな」
「素直じゃないな〜と思いまして」
体を離されてむっとした顔を見せる。おやおや整った顔が台無しだ。
「ここ、しわになっちゃうぞ」
眉間にしわがよっていたので、そこをつんつんとつつく。
「本当におまえはムードもくそもないな」
「私にそんなのを求めないでくださいな」
2人でくすっと笑い合う。
(あぁもう幸せだな〜)
「名前…」
幸せを満喫していると名前を囁かれて彼の顔が近づいてきた。私だってこんなときは目をつぶるって分かってるよ。
そっと瞳を閉じると彼のあたたかい唇がそっと触れた。


「あれ?」
リビングに来て昨日の料理を片付けようとしたが、そこには跡形もない。しかもシンクには洗ったお皿が置いてある。
「あぁ、全部食べた。」
「ぜ、ぜんぶ!?」
あの料理の量は2人分とはいわない。張り切って作りすぎて5人分ほどはあったはずだ。
「ちょ、もう…そんな気をつかわなくていいのに…」
別につかってなんかない。彼はそう言って台所に立った。どうやら朝食の準備をしてくれるようだ。
「…味はまあまあだったな」
「まーたそんなこと言う〜」
知ってる。彼のまあまあはおいしかったっていう意味だって。
「えいっ!」
けどちょっとむかついたから後ろから抱きついてやった。
「おい!危ないだろ!」
「へへ〜私サンドイッチがいいな〜」
「はいはい分かったからシャワー浴びてこい」
「は〜い!」
幸せ。昨日あんなにさびしかったのに今はちっともそんなこと思わない。
ルンルンスキップで脱衣場まで向かった。あ!またこどもっぽいとか思ったでしょ!


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