事件




隣には泣いている女の子。目の前には拳銃を持った犯人。

(面倒なことになったな〜)

ちょっと今日をさかのぼってみることにしよう。
朝、零くんと零くん特製サンドイッチを食べ、一緒に登庁した。
今日の私の予定は、この蒸し暑い中各省庁のパソコンに異常がないか確認まわりをすることだった。
まあどこもかしこも節電に力を入れているようで暑い暑い。汗ダラダラだったけど涼しい顔して細かい要望に応えてやったわ!すみません愚痴です。
無事に終わってジュースを買って帰ろうとコンビニに寄ったらタイミング良く強盗に遭遇しちゃった。というわけです。

「おい全員ここ一列に頭ふせて並べ!」

(変だな…何か別に目的があるとか?)
ただの強盗であればお金をとってすぐに逃げればいい。でもこいつはレジのお金には目もくれず客全員を人質にとった。
おとなしく指示に従いながら、対応策を分析する。
(さて、どうしたものか。)


























「大変です!近くのコンビニで立てこもり事件があっていて、人質に名字さんが含まれているようです!」

会議中のいきなりの悪報に会議室がざわめく。そして一斉に指揮をとっていた降谷に視線が集中した。

「そうか。では次の案件だが、」
「ちょ、ちょっと待ってください!名前さんが巻き込まれてるんですよ!?」

自分の彼女が事件に関係しているというのに、降谷は冷静に会議を続けようとする。その神経が信じられなくて、別の意味で会議室がまたざわついた。

「あいつはアホだがそこらへんの野暮にやられるやつじゃないさ。」
「で、ですが…!」
「何なんだお前たちは。俺に何をしろと言うんだ。」
「いやここは“名前!“って叫んで現場に向かうのが普通かと…」
その場にいる全員がうんうんとうなずく。
「は、」
くだらんと吐き捨てて会議の続きをするぞと資料にまた目を落とす。
部下たちが理解できないと隣同士で目を合わせている間、風見だけが納得したように頷いた。




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