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今聞こえた言葉は幻聴だろうか。
「れ、れ、れ、零くん。今なんと…?」
「何も言ってない。」
「うそだ〜!零くんが愛してるって言うの去年の10月28日以来だよ〜!」
「そういうことは覚えなくていい…。」
「えへへ〜」
嬉しくて抱きつく私に呆れながらもちゃんと抱き止めてくれる。むふふ、と幸せに浸っていると、急に体が回転していつのまにか零くんに見下ろされる形になっていた。
「およよ?」
「さぁさっきの続きをしようか?」
「な、何で?もうその雰囲気じゃなかったよね{emj_ip_0793}」
「雰囲気なんてどうでもいい。ほとんど毎晩一緒に寝るのに、1週間と4日も我慢してやったんだ。」
「ふ、にゃ… 零くんもそんなこと覚えてなくていぃ…」
耳たぶを甘噛みされて囁かれる。だめだ。弱いところなんて全部知られてるし、完全に相手のペースに飲み込まれている。
「名前いいだろ?」
「もう…いじわる…」
断るわけないって知ってるくせに。
返事の代わりに軽くキスをしたら、貪りつくようにキスを返された。
「ん、あっ…」
いろんなところを彼に触れられるたびに、自分のじゃないような声が出て恥ずかしい。
ふ、と目を開けると零くんの汗に濡れた金髪が、月夜にきらきらと照らされていた。
(き、れい…)
私は空気が読めないから今伝えるべきことじゃないかもしれないけど、どうしても今伝えたい。
彼に手を伸ばすと気づいてくれて抱き寄せてくれた。
「あ、のね、零くん、っあ…」
「、ん?」
振動は止めてくれないから言葉が途切れ途切れになってしまう。
「れ、くんと一緒にいると、ん、嫌なこととか全部わすれられるの、っ、だから、ず、とずっと零くんと、あっ、一緒にい、たいっ…」
「、お前は本当にっ…!」
そこから振動が激しくなったから彼の反応を見ることができなかった。でも絶頂を迎えるときに聞こえたような気がしたの。
ありがとう、って。
自分の腕の中ですやすやと眠っている名前を見つめる。
(零くんと一緒にいたい)
それは俺のほうこそだ、名前。
君がいるから安室透になってもバーボンになっても"降谷零"を忘れずにいられる。
彼女のふっくらとした下唇を撫でる。
小さい時から変わらない、いや年々増していくこの想い。
「好き、だ…」
出来ることならずっと部屋に閉じ込めて君を独り占めにしたいと伝えたら君は何ていうだろうか。
俺はもうこんなに君に溺れている。
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