「ブラック・シリウス!」

七年間生活する寮を決める組み分けの儀で一年生の俺は名前を呼ばれて前へと進んだ。手を握り締めて、帽子が頭に乗せられるのを待つ。

今日、俺は生まれ変わるんだ。


「グリフィンドォォォォル!!」


組み分け帽子が叫ぶ。俺は帽子を脱ぎ捨てて一目散にグリフィンドール寮のテーブルへと走った。これで俺は晴れてグリフィンドール生になったという訳だ。スリザリン寮のテーブルをチラッと見たら、皆馬鹿みたいに口開けてこっち見てやがんの。期待を裏切ったようで悪かったな!でも俺は絶対闇の勢力に加担するような奴らが行くような寮に入りたくなかったのさ。

しばらくしてホグワーツ特急で出会った相棒、ジェームズ・ポッターもまたグリフィンドール寮のテーブルに来て、俺の隣に座った。


「ようこそ相棒!グリフィンドールへ!」

「おい相棒、それを言うのは俺じゃないのか?まあ良いか。同じ寮になれて嬉しいよ。これからよろしくな」

「ああ、こちらこそよろしく!ほら、ブラック家の跡取り息子がスリザリンじゃなくてグリフィンドールを選んだからって皆こっちを見てるよ。ファンサービスはしてあげないのかい?」

「誰がするか!」


二人でケラケラと笑う。ジェームズとの掛け合いは新鮮で楽しい。途中でジェームズのお気に入りとなったエバンズが同じテーブルに座っているのを見つけ、ジェームズが喜びの舞を踊るという奇行に走ってめちゃくちゃ面白かった。

(監督生である上級生に途中で怒られてて更に笑った)

そんな組み分けもいつの間にか最後の一人だけになっていて、特に興味は無かったが、まあ最後だし見てやろうと思い視線をそちらにやる。


「んなっ…」


黒髪をボブカットにした赤目の女が足をパタパタさせて落ち着きなく組み分け用の椅子に座っている。その女の手足は包帯でぐるぐる巻きにされ、左目の部分は黒い眼帯で覆われていた。なんだあいつ、親に暴力でも振るわれていたのか?と思うほど痛々しい。


「グリフィンドォォォォル!!」


グリフィンドールに組み分けされ、大広間が拍手の音に包まれた。女は急いだ様子で立ち上がり、脇目も振らずグリフィンドール寮のテーブルへ走ってきた。エバンズが「こっちよ!」と右手を上げて女を呼ぶ。隣からジェームズの「え、知り合い?」という声が聞こえたが無視した。


「やあ我が盟友リリーよ!心配しなくても大丈夫だっただろう?勇猛果敢な我には獅子寮以外の寮は似合わぬ」


拍手に負けないくらいデカい声と、カーカッカッカ!と独特の高笑いが大広間に響き渡った。な、なんだあいつ。隣を見ると、ジェームズも困惑の表情を浮かべている。


「ちょっと独特の話し方をする子なんだね。見た目も相まってヤバい子かと思っちゃった」

「そうだな。あれか?田舎特有の訛りみたいな」

「ああ、そうかもしれない。でもエバンズと知り合いみたいだよ?出身が同じならエバンズも田舎育ちになっちゃうじゃないか!」


彼女は天界生まれ天界育ちだ!と力説するジェームズの話を聞き流す。気がつけばダンブルドアの話は終わっていて、目の前に美味しそうな食事が現れた。俺の大好物なチキンもあるのに、何故か奇抜な見た目の女の事が気になって何度も女とエバンズの方を見てしまう。「君も一目惚れかい?」とニヤニヤ笑うジェームズを「違う」と肘で小突いてやった。

そういや俺、あいつの名前聞いてなかった。
前へ次へ