02.娘様は魔女
しっとりと纏まった艶やかなシルバーブロンドに、空を閉じ込めた宝石のように輝くライトブルーの瞳と、ニキビも毛穴も見当たらない白い肌。ふっくらとした紅色の唇は可愛らしく弧を描いている。
黒いリボンで結ばれたサイドテールに、フリルがふんだんにあしらわれた白いワンピースを身に纏い、鏡の前でモデルポーズを決める少女は『この世界』の私だった。
「やだ〜今日も可愛い!パーフェクト!」
頬を朱色に染め俯く姿は世の中の男子をクラリとさせてしまいそうなくらい可愛い。
だけど私のナルシストみたいな発言が全てを台無しにしていた。
*
少女の名前はリーザ・グレンフェル。9月1日生まれの5歳児で、由緒正しき貴族の令嬢。
見た目は5歳児だけど中身は残念な成人女性(オタク)である。
前世は平々凡々といった言葉が似合うような地味子ちゃんだったが、今世はロリコンに狙われそうな魅力を持つ美少女だ。若干のナルシスト発言も許して欲しい。
いきなり朝起きたら日本語が通じない恐ろしい世界の赤ちゃんに生まれ変わっていたから「あ、詰んだ」と人生の終わりを悟ったものの、5年も経てば異国語…英語は第2の母国語と胸を張って言えるようになった。慣れって怖い。
話は変わるが私の家には毎日写真の中の人物が動き回る不思議な新聞が届く。私の知る写真が動く新聞というのは、金曜ロードショーでお馴染み「ハリー・ポッター」シリーズに登場する日刊予言者新聞くらいだ。その日刊予言者新聞という名前の新聞が、イギリスのグリモールド・プレイス14番地…私の家に、毎日梟がせっせと足に括りつけて運んでくる。
日刊予言者新聞、イギリス、梟。更にグリモールド・プレイスなんて本来のイギリスには存在しない住所。
ここまで要素が揃えばお気づきの方もいるだろう。
ここはあの「ハリー・ポッター」の世界だと!!
初めて気づいたのは2歳の時…今考えれば気づくのが遅い…それはもう小躍りするくらい嬉しかった。
モビールが泳ぐように動いたり、何も無い場所からドアが現れたり。それらは全部「魔法」の影響を受けたものだったのだ。ついでに私の両親は「魔法使い」と呼ばれる存在だった。
最初は現実逃避をしたかった脳が見せた幻覚だと思っていたけど、杖を振る母に自分からシンクに飛び込んでいく食器や空飛ぶスポンジ、写真が映像のように動く新聞は科学が進んだ未来の世界では無く、全て魔法によるものだったのだ!!
やった、ホグワーツに行ける!ハリー達に会える!
ウキウキ気分で周りに花が咲き乱れるくらい…花は私の魔力の暴走によるものだった…浮かれた私はとんでもない事実を3つ見落としていた。
1つ、私が生まれたのは1959年でハリーと20歳も歳が離れている事。
2つ、私が住んでいるのはグリモールド・プレイス14番地で、そのご近所さんは魔法界の王族、泣く子も黙るブラック家。そして私と同い年の長男と2つ下の次男がいる事。
3つ、私の両親はスリザリン出身の純血な魔法使いなのにも関わらず熱烈なマグルオタクで、しかもそれを隠してブラック家と仲良しな事!!
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