04.非凡な私の平凡な日常
ピンポーン、とチャイムの音がリビングまで響いた。
特にする事も無く寝床として陣取っていたソファを降りて、小走りで玄関に向かう。
ドアを開けた先には、黒髪に灰色の瞳をした美少年の兄弟がいた。


「2人ともいらっしゃい!」

「よおリーザ!」

「お邪魔します」


はねっ毛が多い黒髪を持ち、自信に満ちた顔をした態度のでかい少年がシリウス・ブラック。ストレートな黒髪を持ち、長い前髪で軽く目を隠した人見知りそうな少年がレギュラス・ブラック。『今の私』の幼馴染だ。


魔法界の子供たちはマグルの学校には通わず、家庭教師を雇って勉強を教わるのが一般的らしい。
私も午前中は家庭教師から簡単な魔法やテーブルマナー、ダンスなど貴族として必要な知識を教わり、午後はブラック兄弟とお互いの家を行き来して遊ぶ毎日を過ごしていた。


「お母様がクッキー焼いてくれたんだ。食べる?」

「「クッキー!」」


目をキラキラさせて喜ぶ姿はとても可愛い。
私にとって2人は年の離れた弟みたいなもんだ。例え未来のアズカバン脱獄者と死喰い人だとしても、でろでろに甘やかしたくなってしまう。
まだブラック式教育の影響をあまり受けていない為、純血主義に染まっていないただの子供だ。毎日せっせと世話を焼いて姉貴分でいたら、いつの間にか姉として認識されたらしい。


「さ、リビングに行こうか」

「姉さん、て」

「いいよレギュラス、お手手繋ごう。シリウスは?」

「お、俺はいいよ!」


シリウスもレギュラスも、ひょこひょこと雛鳥のように着いてくる姿がとても可愛いらしく、思わずにやけてしまう。
…いたけな美少年を侍らせる悪い女になった気分だ。


3人で仲良くリビングに向かい、ソファに座る。
席順はいつも左からシリウス、私、レギュラスだ。
懐いてくれるのは嬉しいけど、両脇からピタッとくっつかれて暑い。


「2人とも、クッキー食べられないから一旦離れよう。私は逃げないから、ね?」

「やだ」

「嫌です」


よりぎゅっとくっつかれた。しまった!効果はイマイチだ!と謎のテロップが頭を通り抜けていく。
はあ、仕方がない。可愛い子に好かれて悪い気分になる奴などいる訳が無い。
にやけそうな口元をなんとか引き締めて、2人の口にお母様特製のクッキーを突っ込み、私も1枚食べる事にした。


幼馴染ポジションは中々美味しい。
四六時中美少年と戯れられるし、この間なんか一緒にお風呂に入るというハダカの付き合いもしてしまった。幼児だから何も間違いは起こらないけど…いや、やっぱりこの記憶は無かった事にしよう。開心術かけられたら2人の事をほんのちょびっとだけいやらしい目で見てた事がバレてしまう。
それはまずい…早く閉心術を学ばないと。

っと、話がずれてしまった。

この兄弟が何故私にこんなに懐いているのか。それはブラック家の方に問題があるからだ。
2人の母であるヴァルブルガ・ブラックは、ブラックの名に恥じぬようにと毎日厳しい教育を母親自ら行っているらしい。
まだ幼稚園で戦闘ごっこをしているような年齢の時から、ずっと。
父親は子供に不干渉、母親は厳しい先生。
親からの愛情を正しく受け取れなかったのだろう。
…そこに現れた幼馴染の少女からの愛情の方が良いと思ってしまう程に。


「なあ、リーザ。今日も悪戯ごっこしようぜ!」

「おお〜いいね。今日はどうする?」


ニヤッと悪どい顔を浮かべるシリウスと今日の悪戯ごっこについて計画を立てる。


「また今日も悪戯するんですか!?怒られてしまいますよ」

「なんだよレギュラス。楽しいだろ」

「そうそう、死体のフリしてダイイングメッセージ残そうよ。レギュラスも一緒にやろう!共犯者だ共犯者」

「うう…駄目ですってばあ!」


私の右手をぎゅっと握りしめながら反論するレギュラス。もっと子供らしく悪戯を楽しめば良いと思うのだが、根が真面目なレギュラスはそれが許せないらしい。

ギャーギャー喧嘩しながら悪戯の計画を立てる…結局折れてレギュラスも仲間になった…ふたりの姿を横目で見ながら、この幸せな時間がいつまでも続けば良いのになぁと思った。


季節は夏。もうすぐ、私の11回目の誕生日が来る。
4/12
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