05.11回目の誕生日
「お誕生日おめでとうリーザ!」

「ほら、リーザにお手紙が届いていたわよ!」

「ありがとうお父様、お母様!」


9月1日、私の11回目の誕生日。朝起きてすぐにリビングに向かうと、でかでかと「HAPPY BIRTHDAY リーザ」と書かれた横断幕が天井からぶら下がっていて、その下で笑顔のお父様とお母様が待っていた。

…中身は三十路だからなんだかいたたまれない気分だ。

11歳の誕生日に届く手紙といえばアレしかないだろう、と思いながらお母様から渡された手紙を丁寧に開く。すると中から予想通り入学許可証が出てきた。


『ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、
最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員


親愛なるグレンフェル殿

このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。
教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

敬具

副校長 ミネルバ・マクゴナガル 』


手紙を読み終えた後、念入りに透かしたりひっくり返したりして点検した後、手紙をぎゅっと抱きしめた。
ああ、夢みたいだ。あの憧れていたホグワーツに私が入れるなんて!あ、ちょっと涙出てきた。


「ちょっと、リーザどうしたんだい!?どこか具合が悪いとか!?」

「あらエド、リーザは感動してるのよ!懐かしいわ、私だっておんなじ反応したもの!憧れていたホグワーツに入学できるってね!」

「ステラ、落ち着こう」

「貴方こそ落ち着いた方が良いわよ」


はしゃぐお母様とそれをたしなめるお父様。いつも通りを装いながら私の様子を伺っているのが良く分かる。
私はにっこりと微笑んだ。


「お父様、お母様!私ホグワーツに入学したい!」


2人は3秒程見つめあってから、弾かれたように私を抱きしめてもみくちゃにしてきた。ぎゅうぎゅう抱き着かれて暑い!


「当たり前よ!貴女は立派な魔女になれるわ。お母様は知ってるのよ、貴女がこっそり魔法の練習をしていた事をね!」

「ああ僕らの可愛い娘!ホグワーツに行って離れてしまうのは凄く寂しいけど、たくさん素敵な体験をしておいで!」

「もう、エドはせっかちね!リーザが入学するのは来年よ来年!」

「おっと、うっかりしていたよハッハッハ!」


暑い暑いと私を抱きしめて離さない2人を無理矢理引き剥がす。その後も暫く2人の掛け合いは続いた。
2人を見ていると愉快なコントを見ている気持ちになり、心がじんわり暖まる。本当に両親は狡猾で闇の魔法使いが蠢くあのスリザリン寮出身なのか。組み分け帽子が寝ぼけていたのかもしれないなあ、と遠い目をしながらも、私は2人にずっと考えていた事を聞いてみる事にした。


「ねえ、もし私がスリザリンに入っても、2人は変わらず接してくれる?」

「「もちろん!」」

「グリフィンドールでも?」

「当たり前じゃないか!」

「…どの寮に入ったとしても、リーザは私達の大事な家族よ。貴女の素敵な友人も同じ。どこの寮でも、家に連れてきて良いのよ!」

「そうさ、僕達は寮で人を選ばない。ホグワーツでできた友人は一生の宝物になるはずだ。だからね、リーザも寮だけで相手を決めつけちゃいけないよ」

「大丈夫よエド、リーザは賢いもの」


驚いた。私の友人がどの寮でも気にしないってのはシリウスの事だろう。実際シリウスは、毎日のように私の部屋で家が嫌だ、純血主義という考えが嫌だ、俺はグリフィンドールに入るんだと愚痴を言っている。
そんなシリウスだけ良いなら「シリウスがグリフィンドールでも」と言うはずだ。だけど2人は「寮で人を選ばない」と言った。シリウス以外の他寮生…グリフィンドール生でも良いと。
物語の中でハリーは、主人公だけどスリザリンを差別し、軽蔑していたのに。
それくらいスリザリンとグリフィンドールの確執は根強く、簡単には無くならないはずだ。なのに、寮で人を選ばないと言えるなんて…どれだけ良い人達なんだ。

この世界に蔓延する差別に囚われない両親の元に来れて良かった。


「私、生まれてきて良かった…」

「あらあら、泣かないでリーザ」


お母様は、そっと取り出したハンカチで私の目元を優しく拭ってくれた。知らぬ間に泣いていたのか。

実際私がこの世界に来たのは生まれた後だし、今でも前世の両親が恋しくなる時がある。
でも、今は。今はこの優しい両親を大切にしようとそっと心に誓い、2人に抱き着いてたくさん親愛のキスをした。
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