ジェームズとシリウスが良い友人かと聞かれたら答えは『NO』だ。悪戯好きの悪ガキ、クソガキ、お調子者。2人が寄り添ってヒソヒソ話している時は碌でもない事を考えていると決まっていて、俺は無関係なのにいつも巻き込まれて。
この前なんか「はいマリア!僕からのプレゼントだ。投げるとラッピングが解けて中から可愛いぬいぐるみが現れるのさ!ほら、開けてみなよ!」と人懐っこい笑みを浮かべたジェームズに渡されたプレゼントを投げてみたら、中に仕込まれていたクソ爆弾が炸裂し、ホグワーツの伝統ある廊下をクソまみれにした。

何を言ってるのか分からないって?俺も分からなかった。

不幸な事にちょうど廊下を歩いていた同級生や先輩にクソ爆弾がクリーンヒットしてしまい、「アッハッハッナイスだマリア!!ヒーッ!ハハッ、ハハハッ!」と馬鹿笑いするジェームズの首根っこを捕まえて逃亡する羽目に。もちろん俺とジェームズは怒りで顔を真っ赤にしたマクゴナガル先生に捕獲され、長時間お説教を受けた後、マグル式雑巾がけで爆弾の後始末をするという罰則を頂いてしまった。

そんな事を繰り返していたら、不名誉ながらいつの間にか出来ていた『悪戯仕掛け人』なる仲良しグループの一員にされていて、同じく巻き込まれたらしきリーマスとピーターと友人になったのだった。





「マリア!貴女嫌な事は嫌って言わないといつまでもあいつらにこき使われるだけよ!」

「どうどう、落ち着けよリリー。女の子だろ」

「マリアだって女の子じゃないの!レディがやっていい限度を超えているわ!」

「僕もあいつらは気に入らない。迷惑だ」


魔法薬学の時間、蛇の牙を砕きながら叫ぶリリーと顔を顰めて心底嫌そうな顔をするセブルスを「はいはい」と適当にあしらいながらぐるぐる大鍋をかき混ぜる。


「確かに2人の言う通り、あいつらは悪ガキだし他人に迷惑をかけるクソ野郎共だけどさ。あいつらの悪戯が成功して皆が笑顔になる瞬間が俺は好きなのよ。一緒にいて楽しいし……うーん、波長が合うんだろうな俺達。そう、俺が好きであいつらと一緒にいるんだよ。だからって皆が笑えない悪戯は駄目だけどな。そこは俺が目を光らせてるからさ!ジェームズもシリウスもリーマスもピーターも、皆ユニークで良い奴らなんだ。2人もきっと仲良くなれると思うぜ」

「私はそう思わないわ」

「僕もだ。それにグリフィンドールとスリザリンは相成れない」

「じゃあセブルスは俺と本当は仲良くしたくないって言いたい訳〜!?俺泣いちゃう!!」

「そういう訳では無いから今すぐ泣き真似をやめろ!不愉快だ」

「ヴェェン!!リリィィィ!!!」

「こらセブ!マリアにキツく当たらないの!」

「卑怯だぞマリア!」


何とか話を反らせた事にほっとしながら「こらセブ!俺にキツく当たらないの!」とリリーの真似をしてぷぅと頬を膨らます。真面目な2人はおちゃらけたように見える悪戯仕掛け人の事が気に入らないんだろう。だけどいつか仲良くなってくれたら良いなぁ、なんて想像しながら大鍋に液体を注ぐ。


「馬鹿マリア!!入れ過ぎだ!!」

「へ?」


ドゴォォォォォォン!!と大きな爆発音を耳にしながら、割れた鍋の破片がデコにヒットして身体ごとひっくり返り勢いよく首をうちつけた。あーあ、何やってんだ俺。チカチカと黒白に瞬く視界、焦ったようなリリーとセブルス。それに遠くから慌てた様子で走ってきたジェームズとシリウスの姿を見ながら、フッと気絶した。





「うわっ!!」


ハッと目を覚まして起き上がると見慣れない天井が視界に入った。ツンとした薬品の香りが鼻を掠め、数ヶ月前にお世話になった医務室だと認識する。


「起きたか」

「わあシリウス。おはよー」

「おはようじゃなくておやすみの時間だ馬鹿」


ベッドサイドに置かれた椅子に座り、優雅に本を読んでいるシリウスに挨拶をすると冷たい視線を向けられた。窓に目を向けるとシリウスの言う通り真っ暗だった。うわあ寝過ごした!と頭を抱える。


「リリーとセブルスめちゃくちゃ怒ってるだろうな…」

「集中して調合に取り組まなかったからだ。反省しろよ」


ムッと眉間に皺を寄せたシリウスの指が俺の額にそっと触れ、バチンと音を立てて弾かれた。


「痛ァァ!!」

「皆に心配かけた罰だ」


クツクツと喉を鳴らして笑うシリウスの言葉に気恥ずかしくなった俺は、彼の両頬を手で掴んでむにーっと伸ばしてやった。


「たてたてよこよこまるかいてちょん!」


言葉の通り上下左右に頬を引っ張る。イケメンフェイスが台無しになって面白い。


「何するんだこのっ!!」

「わははは」


頬がだらーんと緩んでる感覚がする。ああまずい。嬉しさでゆるゆるな顔してるぜ今。


「皆に心配かけたって事は皆心配してくれたって事だろ?俺、嬉しくってさ」


にへらーっと笑ってシリウスに「ありがとう」とお礼を言うと、突然ガタッと音を立てて立ち上がったシリウスは、顔を伏せたまま無言で出て行ってしまった。


「な、なんだあいつ」


急な展開に目を白黒させたが、お腹が痛かったんだろうなと結論づけた俺は、マダムに叩き起されるまでもう一度寝ようと布団を頭から被った。


夢の中で俺は悪戯仕掛け人とリリーとセブルスという面子で魔法を使ったサッカーをして遊んだ。皆で笑いながら芝生を駆け回り、日が暮れるまでボールを追いかけるという楽しい夢だった。

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