05
悪役キャラが夢主に対して冷たいです。
なんでもOKな方だけ閲覧お願いします。
「貴様、小賢しい手口を使ってまで我に勝とうと言うのか」
「…え?」
ガノンドロフと名乗った大男は、眉間に皺を寄せて、私を睨みつけた。
「貴様が小細工をしてその地位を手に入れたことは既に明白。その戦闘技術、体術、剣術どれをとっても素人同然だ。それなのにお前に打ち勝った挑戦者が居らぬと言うのは、奇妙な話だ…」
「……」
私も好きでこの地位にいるわけじゃないし、勝つためにそれなりに努力はしてきたつもりだが、小細工、という点に関しては否定は出来なかった。
「否定もせぬとは…愚者を相手にする為に我はここに来たのでは無い…が、貴様には少々躾が必要だな」
殺意混じりの怒気を感じると、私はすぐさま後退した。
不味い、今まで来た挑戦者の中で頭ひとつ抜けて強く、そして残虐性がある人だ。
「お前が負けを認めるまで、甚振ってやろう」
「……ええ…そんなことで負けられるなら、好きにしてください」
「我を愚弄するか貴様ァ!」
怒りが頂点に達し、激昂したガノンドロフは、私を仕留めんばかりに剣を抜刀し、こちらへ走ってくる。
剣が振りかざされる音がした次の瞬間
「はいはい!ストーーップ!!これは対戦であって、決闘じゃないから!」
ポーズされたかのように、両者の体の動きが取れない。どうやらマスターハンドが止めに入ったようだ。
ガノンドロフは仕留める寸前に動きを止められたことに殺意がダダ漏れだった。
「夢子はちゃんと彼女自身の実力で最強の地位を手に入れてるんだから文句言わないの!」
「……」
私の実力、ねぇ。
「……我は認めぬ。この愚者と剣を混じえることすら恥だ」
「あー!虐めない!もうガノンと夢子の対戦は金輪際禁止!」
マスターハンドにそう告げられると、ガノンドロフは私を視界にすら入れたくないようで、出口の扉を乱暴に閉めて早々に出ていった。
「……夢子、少し休みな。しばらくの間、君とファイターの対戦は休止するよ」
「ありがとう…」
今まで何度も伝えようと試みたけれど、何度も失敗に終わったことがある。
「あのね、マスターハンド。実は私は……」
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「…夢か」
ファイターの戦闘スタイルと対策について考えていたらいつの間にか机の上で寝てしまっていたらしい。
やな事思い出した。
この世界に来て、結構最初の頃の記憶だ。
「なんで今更…」
記憶は厄介なものだ。
1つ思い出すと、ほかの記憶も連鎖して思い出してしまう。
ガノンドロフだけではなく、ほかのファイターも私を少し疑うような目で見る時がある。
その度にファイターとの距離を徐々に置くようにしていったんだっけ…。
最初は他のファイター達とも仲良くしたくて、広間で談笑したり、一緒にお菓子を食べたりもした。でも、そんな仲間に一瞬でもそんな目で見られてしまったと思うと、いつも通り顔向け出来なかった。
「どうして…私だけが…」
「お前だけが、なんだって?」
涙でぼやけた視界を拭って、イスから立ち上がり振り返ると、アイクがそこに居た。
「アイク…!」
「待たせたな、すまない」
連戦後なのか、少し疲れた顔をしてこちらに向かってくる。
いつから来てたんだろう…いいや、そんなことよりも休んでもらった方がいいよね。
「ここに座ってください。今お茶を淹れます」
「ありがとう、頼む」
ケトルに火をかけて、紅茶を淹れる準備を進める。アールグレイはベレトと飲んだから、アイクとはアッサムにしよう。
「さっきの話の続きだが、何がアンタにだけあるんだ?」
「……」
紅茶を蒸すために、砂時計を逆さにした。
サラサラと下へ落ち始める砂を見て、小さくため息をついた。
「アイク、私は…」
「ああ、なんだ?」
何度叫んでも、どんな手段で伝えようとしても伝わらなかったことがある。
何時しか伝えることを諦めて、軽蔑の目で見られる環境を受け入れようとした自分もいた。
でも、彼になら、もしかしたら。
「勝負に勝つまで永遠と時間を巻き戻されてしまうんです」
随分と打ち明けるのに躊躇したから、砂時計は落ちきっている頃だろう。
ゆっくりと、目線を砂時計の方へ向ける。
砂はたった今、落ち始めたようだった。