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「ねぇ、あまね覚えているかい。...6年前の悲劇を。」
「...はい、忘れられるわけがありません。」
耀哉は穏やかに、しかし奥深くには後悔をしているような声色で妻へと問いかけた。


__6年前、鬼により240人が亡くなった世間を騒がせた事件があった。

もっとも世間は鬼だとは知らず、祟りだの呪いだのと噂され本当のことは知りもしなかったが、鬼殺隊にとっては二度と起こしてはならないという決意を固めた事件でもある。


「あの生き残りの子が今日、最終選別を受けているんだ。」
「...そうなのですね。」
空をみあげる、気持ちとは裏腹に快晴である。

「生きて私の剣士になってくれるんだ。あの子は強いから大丈夫。」

鬼殺隊になると覚悟を決めてくれた時は嬉しいと思ったが、あの子にはもう辛い思いはして欲しくないとも思う。

鬼殺隊として剣士が増えるのは喜ばしい、だが耀哉本人、一個人として彼女の幸せを思っている。

今は妻と2人、鬼殺隊としてではなく夫婦の会話なのだから思いを吐露してもよいだろう。

「考えて決めてくれたことだからいいのだけど、あの子には幸せになってほしいんだ。」
そのためにも私は鬼を、鬼舞辻を倒さなくてはならないね。