prologue

籠の中の鳥は外の世界を知らないからその生活に不満を覚えはしないだろう。けれども普段閉ざされた扉が開いていた場合、好奇心から外へ旅立つ鳥もいる。逆に開いているのにも関わらず中でじっと主人を待つ鳥もいる。


私もきっと手を差し伸べてくれる彼がいなければ籠の中の鳥のままだった。

外の世界は楽しくて、けれどもその分つらくて世間が私にどれだけ厳しいかを思い知った。

苦しい思いをするのであれば、外にでなければよかったと何度も思った。

けれど彼と過ごした日々は、私にとって初めて生きていると実感できた日々で、籠での生活はとても退屈で窮屈なものだったと知ってしまった。今更戻りたいとは思えない、それが罪だとしても。



*


人は欲深い生き物で、手にしたら次の欲求が生まれるものだと彼は言った。

けれど私は満足しているんだ、この生活に。

それを彼に伝えると「僕は満足できないんだ。」と少し寂しそうに話した。



普段の彼からは想像できないほど幼い孤独な少年のような顔で。