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「瀬川有紀、カウンセリングの時間だ。」
私が問題を起こしたため、久しぶりのカウンセリングだった。
あのおっさんから次はどんなカウンセラーに変わるのだろう。
少しはましな人がいいと期待し、拘束されながら歩く。

カウンセリングルームに入り、拘束をとかれる。
少し待っていると、そこに現れたのは美しい顔をした青年だった。

「君が瀬川有紀だね?」


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数日前、私の担当だったカウンセラーが自殺をした旨を聞いた。
少し前から私のカウンセリングの時に様子がおかしいなとは勘づいていたが、患者である私の立場からは何も言えなかった。
彼女はとても優しく、笑顔が素敵な女性だった。
少なくとも今まで出会った人の中で1番優しい人だった。
私を人間として扱ってくれて、最後に会った際には「ごめんね、あなたのサイコパスを上手くケアしてあげられなくて...」と泣きながら謝られてしまった。

その言葉を聞いた時に、私も胸が苦しくなり、期待にこたえられない自分が嫌になり一緒に泣いた。

同時に彼女のサイコパスを自分が徐々に悪化させていたことに気づき、潜在犯が隔離されているのにサイコパスの悪化は伝染するためという理由が本当だと理解したくなかったが納得した。
...たぶん彼女を自殺に追い込んだのは私なんだろう。直接的ではなく、間接的であるが私が殺したようなものなんだろう。今更悔やんでも彼女はかえってこない。その事実だけがのこる。
涙はでてこなかったが胸が苦しくてたまらなかった。



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喋り好きの後任できたカウンセラーは聞きたかった訳では無いのに、私に彼女の最後を事細かに伝えてきた。彼女は私の境遇に涙し、自分の力不足をなげくとともに、シビュラシステムに疑問を持ってしまった。そのためサイコパスが濁り、思い悩み自害したのだと。
俺は潜在犯なんかに同情しないと笑いながら話してきた。
この人が笑っているのに腹が立った。
睨みをきかせて彼を見ると、怯えて私を監視の者に拘束された。
特に暴れた訳でもないのに拘束され、注射器をもった医師があらわれ何か薬剤を注入されるとともに意識が遠のいた。
...どうしてこの人にカウンセラーの適正がでたのか、この時私はシビュラを疑った。


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問いかけに「はい。」と応えると彼は私を真っ直ぐに見つめ、「君はシビュラを憎んでいる?」
と問いかけられた。

カウンセリングの最初の問にしてはかなり変わったものだと思うが、私は考えた。

私はシビュラシステムにより、自我を持つ前から社会に適さないと判断され潜在犯として生活している。