きっと一方通行(真田)
ヒトというのは長い年月をかけて頭脳が発達し、同時に動物的な直感や五感は鈍った。そんな人間でも不思議なもので、視線や気配には気づく。昔の戦国武将なんかは命がかかっているからかとても敏感だったらしい。俺も気配には敏感な方だが今はそれよりも…あの人がそうであったならと考える。
いつからか気づけば目で追っていた。ふと我に返ると視線は彼女に向いていた。それなのに一度も視線は合わない。きっと羅々が戦国時代に生きていたら易々と殺されるんだろうなあ、と後ろ姿をぼんやり見つめた。
サラサラと肩から滑り落ち、背中を流れる美しい髪。太陽の光をよく反射してしまう白い肌。大きな目。可愛らしい唇。そのすべてに目を奪われる。
……やれやれ。俺はまた羅々を見ていたのか。自分で自分に呆れてしまう。佐助は声を掛ければ、と言うがそんなことを俺ができると思って言ってるんだろうか。思っているとしたら佐助は未だに俺のことを理解していないとみた。まぁ、せっかくクラスが一緒になったのに話さないのは…確かに損をしている気分だ。いつも後ろ姿を眺めているだけなんて。せめて、目でも合えば良いのに。本当は話したいのだ、俺だって。それができないから…見つめてる。
「羅々…」
ぼそっと呟いても気づく気配はない。
ガタッ
羅々が紙を持って席を立った。そしてこっちに近づいてくる。気付いたのか…?ようやく俺に気づいてくれたのか?歩いてくる羅々を見ていると、その視線はこっちに向いていた。ようやく願いが叶ったと心拍数が上がる。だが、近づくにつれて違うことに気付いた。
「猿飛くん、これ委員会のプリント。この前いなかったでしょ?代わりに受け取っておいたよ」
羅々は俺に目もくれず、すぐ隣の席に座る佐助に話しかけた。
「あ、ああ…ありがと、雅楽川さん」
「次はちゃんと出てね」
「あははーごめんごめん」
羅々は佐助と話している間、一度も目を逸らさなかった。
なぜだ?
どうして佐助とは目を逸らさないのに…
立ち去る羅々を見つめても、やっぱり視線は合わない。
「佐助」
「ごめん…旦那…」
「俺は、羅々の瞳に映りたい」
「は…?」
羅々が俺になんの興味も持っていないというなら、俺は何か目立つことをしよう。そうして、笑っている羅々と見つめ合うことができたならそれだけで嬉しい。
でも、その美しい瞳を見て平静を保てる自信はない。
「旦那」
こんな気持ち、初めてだ。
「旦那ってば」
俺は一体どうすればいい…?
「今見られてますよー」
いつまでも、その瞳には映らないのだろうか。
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単に幸村が鈍感っていう
お題:確かに恋だった様より「どんなに見つめても君と視線が交錯しない」
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