時々思うんだよって、巴は言うのだ。
あまりたらればの話をしないひとが、そういうことを言い出すものだから、焦ったくなってしまって手を握る。

「今、ここにいるでしょ」

驚いた顔を見るのは好きだ。
一瞬だけ狐につままれたみたいな表情をして、巴は指を絡ませてくる。
自分から始めたことだけれど、それはそれで……まるで恋人同士のようで恥ずかしい。

何やら満足げな巴はさておき、隣で彼が佇む姿は青空を背景にしているせいか漫画の一コマを見ているような気分になる。
漫画のヒロインになったような、勘違いをしてしまいそうなやつだ。

「ほんっと、去年はぼくと過ごさなかっただなんて……もったいないことしたね、鹿矢。お詫びに今年の夏はぼくとたくさん遊ぼうねっ!」
「お互い仕事あるでしょ〜。空いた時間が合えば遊ぼう?」

なーんて。
そんなことを言いながらもきっと私はきちんと時間をつくるんだろうなあ、とか思ったりして。
学校が変わっても彼に甘いところは変わらないらしい。

「うんうんっ、手始めに買い物にでも出かけるね!」
「そうだね。よしっ、行こう」

張り切って足を進める先はショッピングモールかそれともデパートか。
まあ、せっかくの夏だからと海まで来たのだけれど、どこだって良いか。

どんな場所でも、たとえ屋内でだって隣で燦々と太陽が輝いているのだから。
私にとっては巴と居るときは出会ってからずっと、夏みたいなものなのだ。



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