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 戯れに始まった紳一との緩やかな口付けは、徐々に深さを増して肉欲を丸出しにしたようなねちっこさへと変貌を遂げ否応なしに気分が高められていった。これからイヤらしい事をするんだと言う意思を、肉厚な舌が口腔内を舐め上げ蹂躙しつつ叩き込んでいく。
 容赦のない蠢きにまるで喰らわれているようだと錯覚する。内側の頬肉を、並んだ歯を、翻弄されているばかりの私の舌を、味見をする様に無尽に絡ませていく。そうされれば応える他無く、こちらも舌を拙いながらも動かすしかない。
 不意に紳一が離れる。いつもよりも少しだけ粗雑に押し倒されると紳一が覆いかぶさる。県予選も制し、インハイまでのつかの間の休息。久しく行われるこの混じり合いに紳一も興奮が押えきれないのかと分かり、胸がぎゅうと締め付けられる感覚が私を襲う。

 肌と同じように日によく焼け、褪色した前髪がちらちらと視界で揺れていること気づいた。
 いつもならまだ乱れることなく、撫で付けられているはずのそれが何となく気になって触れてみると、服の裾へと忍ばせていた紳一の手が止まった。たぶん私の突拍子の無い行動に戸惑っているのだろう。そんなことお構い無しに垂れた髪をそっと撫で付けてみる。
 ああ、これだこれ。大人びた色気がありながら、鋭い野性味を感じる紳一。髪型を変えてまだ日は浅いけど、少し懐かしさを感じる。
 垂れた前髪で遮られていた目と視線が合う。滾る情欲を隠そうともせず、射抜くようなそれにゾクリと甘い感覚が背筋を駈ける。

「最近髪下ろしたまんまだね」

 表情が少しだけ苦々しい物になる。

「まあ、な」
「もしかして、湘北のあの子に言われたこと気にして変えたの?」
「……」

 無言は肯定だと言うことに他ならない。
 県予選で湘北高校と対戦した時に、破天荒な赤髪の子にOBに間違われ、紳一にしては珍しくムキになって反論していた姿が脳裏に浮かぶ。試合から程なくして髪型を変えていた当たり結構ショックだったようだ。鏡の前でその色の抜けた髪を弄り、あれやこれやと試行錯誤をしていたとのだろうなと想像するだけでもとてもいじらしく思う。

「……前の方が良かったか?」

 こちらを伺うように聞く紳一の首に腕を回しキスをする。
 そんなもの愚問だ。

「どっちも好きに決まってるでしょ」

 どんな紳一も好きなのだから。