「どうして」

「どうしてこんなことに…」

まず私は原因を考えてみることにした。
主人公と別れてからふらふら歩いていると公園が目に入り、ベンチに腰掛けた。
私はあの時仕事帰りだった――

普通の会社員だった私は少し残業してから会社を出た。ただその日は電車が遅延しており、いつもと違う帰り方をし、電車を待っていると、帽子を深めに被った若い男性に道を聞かれた。

「すみません。こちらのホームは○○駅を通りますか?」

「え?あ、はい。通りますよ。」

「ありがとうございます!…遅延なんてやめてほしいですよね」

「…え、あー、そうですね。まぁそんなに気にしても仕方ないですから」

「…そうですね!何とかなるもんですよね。…'何が起きても'」

「え?何ですか?」

「いえ!本当にありがとうございました!」

男性は何かを呟いたような気がしたけど、よく聞こえなかった。
そのまま帰路につき、家に戻り朝を迎えると、何故かこの'米花町'に降り立っていたというわけだ。特に代わり映えのしない1日だったと思う。特に何かを望んだり、嘆いていたわけでもないのに。そこそこ仕事に遣り甲斐を感じていたし、恋人も、いた。
―――帰れるのだろうか。

嫌な考えを振り払うかのように首を振った。
そもそも'この世界'のことも、ある程度の知識しかない。毎年公開する映画を友達とたまに見たり、漫画だって子供の頃はよく読んでいたけど、最近の話は見れていない。ただ何も知らない世界に放置されたり、遥か昔の世界よりはマシなのかもしれないが…なぜ私なのかと疑問が残る。
そして意外と冷静な自分にも驚いた。いや、冷静というよりは混乱している頭を冷やそうとしているのか。

「あれー???名前姉!こんなところで何してるんだー!?」

少し日が傾きかけた頃にどこかで聞いたような明るい声がかかった。
いや待て、私に'この世界'での知り合いなんていない。
その人物に目を向けると、これまたどこかで見たような制服に身を包み、少し猫毛がかった黒髪をなびかせ、嬉しそうに近寄ってきた。

「大丈夫かー?何か悩み事??」

「…世良、真純」

「おいなんだよー。急にフルネームで呼ぶなんて!」

その人は可愛らしい八重歯を見せつけるかのように、輝かしい笑顔で笑った。