仲良くしようよ


〜もしもシリーズ〜
with ハートの海賊団

※重要ではないですが、シャボンディ編でハートの海賊団に着いて行ったという時間軸で書いてます







「だぁー!!!また負けた!!」

「私に勝とうだなんてまだまだ早いですよっ!」

'シャチ'みたいな形になっている帽子を被った男は、その場に尻から崩れ落ちた。それを上から得意気に見つめていたのは――

「ナマエも大人気ないね〜」

「間違いない」

「大人気ないんじゃなくて・・・本気でやったまでです」

ナマエはムスッとしながら、遠巻きに見ていた人物に声をかけた。
オレンジ色のツナギにその図体がすっぽりとハマっているのは白い毛並みが特徴的な'熊'。そしてもう一人はキャップの鍔に'PENGUIN'と書かれていた男性だった。
2人は勝負が着いたであろうナマエとシャチをからかい始める。

「本気って言っても、ナマエの本気は本気じゃないだろ」

「確かに!ナマエは'キャプテン'の前でしか心を開いてくれないもんね〜」

「・・・別にそんなことはありませんよ」

一瞬眉間に皺が寄ったと思いきや、ナマエはシャチに手を差し出しニコッと微笑みかける。気のせいだろうか、今、何かを言いかけたような気がするが。シャチは間近でその表情を見ていた為か少し疑問に思った。
ナマエの手を借りて立ち上がったシャチはナマエを改めて見つめるも、ベポとペンギンと話す姿はいたって'普通'であった。

「おい・・・騒がしいぞ、おめェら・・・」

ガチャリと開いた扉の奥からは酷い'隈'を無防備に晒しながらも、目つきは悪く、声もズシッとくるような、風格あるその人物に船員は背筋が伸びた気がした。ただ1人を除いては。

「ロー!!またこんな時間まで寝てたの?」

「・・・あ?・・・寝ずに資料に目を通してたんだよ・・・」

「ふーん。それはお疲れ様ッ」

ナマエはポンッと軽快にローの背中を叩くと、船内に入って行く。「何か温かい飲み物取ってくるね!」と駆けて行った。それを見ていた船員は心を一つにして思った。どう見ても'自分達には心を開いていない'と。ナマエが仲間になったのは最近っちゃあ最近だが、暫く共に過ごして来たというのに中々ナマエの底が見えないのだ。

「キャプテン〜!!ナマエとどうしてそんなに仲がいいの〜?」

「・・・あいつ、キャプテンにはタメ口なのに、おれ達にはずーっと敬語だもんな〜」

「癖とか言ってたけどよォ〜」

グチグチと次々に不満の声が漏れた。それは不快なものではなくて、どうにしかしてナマエと'仲間'になれないだろうかと。
ローはそんな仲間の様子に、ナマエが駆けて行った方へと視線を向ける。あいつは'昔馴染み'であり、'大事な人'である。自分に懐いているという自覚はあるが、それがどういったものから来ているのか、あいつ自身にしか分からないのだ。
だが、こいつらに対して'距離を置いている'という風には――

「見えねぇけどな」

「え?」

ローはフッと笑うと扉へ再び歩いて行く。するとちょうど話題に上がっていた人物が奥から向かって来ていた。

「ナマエ、こいつらお前と仲良くしたいんだとよ」

「ちょ!ちょっとキャプテン!!」

「なんでそんな余計なこと・・・!!」

ローはあわあわと焦る仲間達を意地悪そうな顔で一瞥し、喉をクッと鳴らすとナマエへと視線を向けた。

「ぇ・・・ぁ、ほっほんと・・・ですか?」

そこには恥ずかしそうに頬を染め、疑ってるような、不安なような、でも嬉しそうな表情が浮かんでいた。その顔に全員目を見開いた。何だ、その反則な顔は。普段澄ましたような顔か、ニヒルな笑みを浮かべる顔か、思い悩んでいる顔しか見たことないのに!!

「・・・あ、えと・・・・・・このコーヒーはローので・・・あとの飲み物は皆で、飲んで・・・ください」

何も喋らない周りにナマエは更に恥ずかしさが増すと、たどたどしく持ってきたお盆をその場に置き、自分の部屋へとこれまた見たことないような速さで戻って行った。
そう、ナマエは別にローだけではないのだ。なんだかんだ他の人達のことも気にかけていた。各々それに気付くと、胸がなんだか暖かくなるような感覚に陥った。くそ、かわいい。
だが、そう思ったのもつかの間、ぶるりと寒気が近くから届いた。このピリッとした感覚に暖かった胸は急降下した。

「・・・・・・・・・おい、おめェら、ナマエと・・・'おれより'仲良く、なんて・・・しねェよな?」

「!!?!?」

酷かった隈が更に酷くなったような目つきの悪さに、ハートの海賊団の心は一致団結した。一線を超えてはいけない、我らがキャプテンに殺られると。




次の日、どこかよそよそしい船員達に少し落ち込んだナマエは、更にローに懐き、ローはそれに満足気な顔でナマエの頭を撫でてやった。

ハートの海賊団とナマエが仲良く出来る日は、まだまだ先のようである。











夢主はローといる時は少し素直になればいいなと思いました。
そしてローさんはそんな素直な夢主に少しやきもきしてればいいなと。
リクエストありがとうございました!書いていてとても楽しかったです!!